下記は、ニューヨークの地下鉄に掲載された広告だ。勃起不全や抜け毛など、男性向けコンプレックスをターゲットにしたD2Cヘルス企業のHimsなどのものである。サボテン、植物などを男性器に見立て、ターゲットとなる男性に訴えかけている。

Jackie Rotman: Intimacy Justice: Business Practices to Support Sexual Equalityより抜粋
Jackie Rotman: Intimacy Justice: Business Practices to Support Sexual Equalityより抜粋

下記は、女性向けセクシャルウェルネス企業のUnboundがニューヨーク市の地下鉄に掲載を依頼した広告だ。パッと見ても何の広告だが分からないようになっているが、この広告は、“不適切である”と掲載を拒絶された。

Jackie Rotman: Intimacy Justice: Business Practices to Support Sexual Equalityより抜粋
Jackie Rotman: Intimacy Justice: Business Practices to Support Sexual Equalityより抜粋

別の例を見てみよう。下記は、前回の記事でも紹介した更年期向け遠隔医療を手がけるGennevの広告だが、これも不適切として“プラットフォームから認可されていない”広告に振り分けられている。

Center for Intimacy Justiceウェブサイトより
Center for Intimacy Justiceウェブサイトより

また、膣の萎縮を抑制することを目的としたヘルステック製品を製造しているJoyluxは、ソーシャルメディアから広告掲載を拒否されたという。失禁や膣の乾燥など、加齢や出産にまつわる女性の悩みを解決するために開発された製品にも関わらず、セックストイに分類されてしまっているというのだ。

根底にある女性の身体へのタブー視

このように、本来認可されるべきソリューションが“不適切である”とされ、拒絶されてしまう現実がある。基本的にこのような事象が起こった場合、Facebookなどの広告プラットフォームに問い合わせをすると、「今回の件はたまたま間違えて分類されてしまった」と回答が返ってくるとロットマン氏はいう。

Center for Intimacy Justiceは、このような事象が一度きりではなく、構造的問題であることを指摘するため、さまざまなケースを集めたリサーチを続け、近々結果を発表するとしている。ロットマン氏は次のように語る。

「女性の健康に関するソリューションを不適切とみなすのは、アルゴリズムが原因だと言われています。Facebookはこの問題について、数年前から指摘を受け続けています。にも関わらず、改善からはほど遠い状況です。プラットフォーム側が十分なリソースや人を十分に投資していないのではないかと考えています」(ロットマン氏)

近年、米大手小売チェーンのターゲットやCVSファーマシーなどがフェムテックスタートアップと提携し、D2C製品をオフラインで販売するケースが増えている。

しかし、フェムテックスタートアップがFacebookなどで広告できない場合、小売店側がリスクと捉え、提携を解消するケースもあるという。ここにも、広告の不平等がフェムテック業界の成長を阻んでいることが見て取れる。