広告の不平等を改善するために、企業や個人ができること

実は、男性向けのヘルステック企業も最初からすんなり広告ができたかというと、そうではなかった。前述のHimsや男性向けクリニック「Roman」を提供するスタートアップ・Roなども、広告を掲載できなかったのだ。このようなスタートアップの成功を願う投資家などが、広告関係者に掛け合い、それまでは不適切とされていた類似製品の広告が可能になったという。

同様に、現在憂き目を見ているフェムテック企業の広告に関しても、より多くの人が問題を認識し、声を上げていくことが必要だ。HimsやRoのように、投資家、広告関係者とつながりのある大企業や政府関係者といった、仲間を増やしていくことも重要だろう。

そのような動きは、米国では、実際に少しずつ始まっている。その例を1つ紹介しよう。フェムテックスタートアップが中心になり、このような広告規制に対して、世の中の認知を高めるため、approved, not approve(意訳:広告として適切か、否か)というウェブサイトを立ち上げた。

同ウェブサイトでは、広告の例が出てきて、サイトを訪れた人が広告として適切か、不適切かどうかを選ぶクイズが出題される。

approved, not approveのサイトより
この画像が広告として適切か否かと問う「approved, not approve」(approved, not approveのサイトより)

筆者は、広告として掲載して問題ないと判断し、approved(承認)をクリックした。そうすると、結果のページが表示される。なんと、この広告は、性的な写真や表現が全く含まれていないのにもかかわらず、Instagramによって拒否されたという。

approved, not approveのサイトより
この画像は、性的な写真や表現が含まれていないがInstagramによって拒否されたという(approved, not approveのサイトより)

このような問題を6問解くと、自分の認識と、広告規制とのズレがわかる。筆者は、6つの広告全てに対して、現在の広告規制と意見が異なるということになった。結果をツイートしたり、問題の詳細を深掘りするような動きが促されている。

approved, not approveのサイトより
問題を6問解くと、自分の認識と広告規制とのズレがわかる(approved, not approveのサイトより)

より多くの人に、このウェブサイトで自分の認識と広告規制がどの程度オーバーラップするのか、試していただきたい。最後に、ロットマン氏に次世代への期待を聞いた。

「女性も男性も、さまざまな性自認の人が、平等に、マーケティングやビジネス開発に取り組める世の中になって欲しいと思っています。さまざまなバックグラウンドの人が、大衆にソリューションを提供できるようにすることで、起業家のエコシステムをより強固なものにしていきたいと考えています」(ロットマン氏)

前回取り上げた更年期障害に取り組むファウンダーたちのほとんどは、自身が更年期を迎えた際に、身をもって、更年期向け商品やサービスが不足していることを実感したため、自分がやるしかない、と、商品やサービス開発に取り組んだという。