SaaSプロダクト「ウラカタ」のイメージ
SaaSプロダクト「ウラカタ」

「付加サービス」から事業者にとって「不可欠なサービス」へ

SaaS自体はコロナ前から提供していたものの、以前はあくまで予約サイトの体験品質を向上させる仕組みとしての色が強かった。

SaaSを導入してもらうことで、消費者が直前まで予約ができるようになったり、チケットの事前購入により当日並ばずに入場できるようになったり。「アソビュー!の利便性を高めるための付加サービスだった」(山野氏)という。

この状況を大きく変えたのが、コロナだ。これまでレジャー施設ではチケットをリアルな窓口で購入し、その半券を受付窓口に持っていって入場するのが主流だった。つまり接触型で、複数の人を介するオペレーションになっていたわけだ。

以前から山野氏たちは電子チケットの提案などを行ってはいたものの、レガシーな業界ということもあり、抵抗感を示されることも多かった。それがコロナの影響によって「(SaaSへの)需要が劇的に高まった」と山野氏は話す。

「感染症対策を実施し、レピュテーションリスクを下げずに営業を続けるとなると、非接触でのチケットの販売や入場管理が重要になります。また多くの施設は売上を毀損する中で、業務の生産性を向上させ、コストを下げて経営していく必要に迫られていました。これらを実現する上ではテクノロジーを有効活用するしかない。そのニーズが高まった結果として契約件数も増加し、会社の躍進のきっかけになりました」(山野氏)

アソビューとタッグを組んでウェブ上に窓口を設けることで、新たな入り口から顧客を獲得できるチャンスも生まれる。実際にSaaSの導入によって売上が増えた顧客も多い。

また予約やチケットの販売をデジタル化することで、業務生産性の改善も見込める。ある施設では事前決済による現金の扱いが減ったことなどにより、着券〜入場までのオペレーションにかかるコストが73%削減された。

「人間はどうしても現状維持バイアスが働くので、やったことがないことに対して抵抗感や不安を示してしまう。でも実際に試してもらうことで『意外と簡単だね』『便利だね』と価値を感じてもらえるように変わってきました」(山野氏)

アソビュー代表取締役CEOの山野氏
 

「観光・レジャー産業のDX推進」に勝機

山野氏が特に顧客から驚かれると話すのが「データ」だ。

というのも、いまだにレジャー施設の中には勘や経験を頼りに経営をしているところも少なくない。そのため「どのような層の顧客が多いのか、どこから来ている顧客が多いのか」といったことについても、明確なデータがない状態で予想せざるを得なかった。