それがチケットの購入や予約がデジタル化されると、データとして見えるようになる。顧客の実態が正しく掴めるようになれば、プロモーションのやり方やサービスの内容も変えていける。

ある施設では、顧客の8割は近隣エリアから訪れていると予想していた。ただ実際にデータを見てみるとその予想が外れていたため、アソビューの担当者から報告をすると「え、違ったんですか? もっと詳しく教えてください」と反応が返ってきたそうだ。

実際にさまざまな顧客と話をしていても「時間帯ごとにどこのエリアからの顧客が多いのか知りたい」「顧客層ごとに入場時間の傾向や満足度の違いを知りたい」といった質問がたくさんあがってきていたという。

山野氏によると、こうした例はごく一部の施設だけでなく、複数の施設に共通するものだ。販売データなど簡単なデータは見れたとしても、「社内にDX人材がいないために、経営の改善に繋がるような分析をできずに困っている」企業も存在する。

そのニーズに気づいたため、アソビューでは4月にウラカタチケットのオプションとして「ウラカタ分析」をローンチした。このサービスでは購買データを基に顧客の情報を複数の角度から分析できるだけでなく、同ジャンル施設の平均値など業界の動向に沿って自社の現状を把握することもできる。

たとえば自社の販売総額や販売枚数を同カテゴリの他社施設の平均値などと比較し、現状を分析することなどができる
ウラカタ分析の利用イメージ。たとえば自社の販売総額や販売枚数を同カテゴリの他社施設の平均値などと比較し、現状を分析することができる

「DX推進の本丸は『データのストックと活用』だと考えています。これが実現できるようになると、旧態依然とした予想に頼る経営から、データを活用した経営に変えていける。以前から構想自体はあったものの、実際に多くの施設にサービスを導入していただき、議論をする中で、集めたデータを経営に活用できるという確信を得られるようになりました」(山野氏)

30億円調達で「攻め」に転じる1年に

事業としては予約プラットフォームにSaaSという新たな柱が加わったことで、より強固な基盤が作れつつある。こうした状況の中で「実は前回のシリーズDを(IPOまでの)最後(の資金調達)にするか、という案もあった」そうだ。

「(それでも新たなラウンドに踏み切ったのは)SaaSが好調で伸びていたことに加え、もっと多くの価値を顧客に提供できるはずだと理解できたからです。SaaSへの投資を強化して、さまざまな施設で使い続けてもらえるようなプロダクトを作っていきたい。そのためにはプロダクトに対してしっかりと投資をするための資金を集める必要があるし、それが会社の成長角度を上げることにもつながると考えました」(山野氏)