中国には競争力のある半導体を生産する能力はないに等しかった。中国政府は技術を手に入れるため、アメリカ企業に強権を振るい、圧力をかけた――。半導体を巡る国家間の攻防を描き、週刊東洋経済の「ベスト経済書・経営書2023」にも選ばれたクリス・ミラー著『半導体戦争』では、最先端技術を巡る米中の対立を浮き彫りにしている。特集『半導体戦争 公式要約版』(全15回)の#13では、中国が半導体産業の育成に注力する背景に迫る。
「中核技術」の研究開発という要塞を襲撃
中国政府が目指す半導体の自給自足
中国のコンピュータの大半は、機能するのにアメリカ製のチップが不可欠だ。実際、2000年代と2010年代の大半の時期を通じて、中国は半導体の輸入に石油以上の資金を費やした。
しかし、石油とは違って、チップの供給は中国の地政学的なライバルによって独占されている。その多くがシリコンバレーで設計され、大半がアメリカかその同盟国を拠点とする会社で製造されているのだ。
習近平は、2017年の世界経済フォーラムで貿易戦争に勝者はいないと宣言し、グローバル化を擁護する姿勢を示したが、これとは対照的に、中国内部では半導体産業の自立を強く推進した。
「われわれは強力な連携を促し、一致団結して戦略的な要衝に攻撃を加えなければならない。中核技術の研究開発という要塞を襲撃する必要があるのだ。そして、われわれはその攻撃を開始するのみならず、招集を呼びかけて、最強の部隊に集中的な行動を促し、特別旅団や特殊部隊を構成してその要衝に猛攻を加えなければならない」
「中核技術」とは半導体を意味していた。しかし、年を追うごとに、中国の半導体の輸入量は増加した。
特にTSMCとサムスンへの市場シェアの集中が加速、それなのに、「クラウド・コンピューティング、モノのインターネット、ビッグ・データ」の影響で半導体の需要が「爆発的に急増」している、と中国指導部は気づいた。