あくまでも俺の話で恐縮だが、FXなら1万円もあれば、海外業者を用いてレバレッジを目一杯利かせ、相場に張り付くこと1週間で10万円くらいにはできた。2週間かけて、1万円を96万円にまで増やしたこともある。
もっともその96万円も、2日後か3日後、たったの1日で736円にまで減らしてしまったという、笑えない後日談もあるのだが。
とにもかくにも、世間では「失われた20年」と言われた時期にようやく終わりを告げ、民主党への政権移行、自由民主党の政権奪還、アベノミクス……と久方ぶりの本格的な景気回復への期待に湧いていた時期の話である。
なぜエクストリーム大家業を
しつこく勧められたのか
そんな時期に母は俺に大家業、それもエクストリーム大家業を勧めたのだ。すこし気取った言い方をすれば、不動産投資と言おうか。この大家業や不動産投資とは、多少の異論反論はさておき、おおむね天井が決まっている投資であり、ビジネスだ。
亡き母が言うように、売買価格にして100万円くらいの物件を購入、これを誰かに貸したとしても、そこから得られる利益はせいぜい5万円くらいが限界だろう。
それ以上の額を稼き出すには、リフォームなど手を加える必要がある。要はカネがかかるのだ。それに、そもそも不動産購入となれば不動産会社への仲介手数料も要る。固定資産税もかかる。
投資としてもビジネスとして見ても、2010年代前後頃の俺には決して効率の良いものとは思えなかった。
「不動産は負(まけ)動産。FXと日経ミニに比べたら、あまりにも効率が悪い。ライターで食えなければ、投資で俺は荒稼ぎするよ」
こう嘯く俺に、亡き母はなおも不動産を購入、大家業を行うことを勧めてくる。しかもワケあり専門、今日で言うエクストリーム大家業をだ。