組織・チームを率いる管理職にとって、最も重要な任務は「成果をもたらす意思決定」をすることです。しかし、多くの業務を抱えるリーダーが、「どうすれば意思決定の質が高まるのか」「必要な情報はどうやって集めるべきか」といった根本的な問いについてじっくり考える時間はなかなかとれません。
そこで今回は、大ベストセラーシリーズ『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』の累計100万部突破を記念し、著者・安藤広大氏(株式会社識学 代表取締役社長)にご登壇いただいた特別イベント『とにかく仕組み化』サミット(ダイヤモンド社「The Salon」主催)より、安藤氏のご講演の模様を全2回のダイジェストでお届けします。(構成/根本隼)

リーダーが絶対にやってはいけない「一発で信頼を失う行為」ワースト1Photo:Adobe Stock

リーダーに権限が足りない場合

安藤広大 組織における意思決定を正しく機能させるには、「責任」の範囲と「権限」の範囲を、きちんと合致させることが最も重要です。

 責任と権限がズレた状態で意思決定をすると、どんなことが起きてしまうのか説明しましょう。

リーダーが絶対にやってはいけない「一発で信頼を失う行為」ワースト1

 上図のように、ある人に与えられた責任に対して、それを果たすための権限が不足している場合、責任はあるのに権限がない部分において、「意思決定をする」という仕事から逃れることができます

 つまり、「権限がないからできなかった」という免責(=言い訳)の余地ができてしまうんです。なので、責任に対して権限が足りない状況は、絶対につくってはいけません。

 もしリーダーに権限が足りていないのであれば、自ら獲得しにいくべきですし、部下に意思決定を要求するのであれば、きちんと権限を与えることが必要になります。

「無責任な意思決定」が発生する場合

 逆に、下図のように、責任以上の権限が与えられている場合は、さらに厄介です。負っている責任が小さいのに、社歴が長いという理由で権限をたくさん持っているパターンなどが考えられます。

リーダーが絶対にやってはいけない「一発で信頼を失う行為」ワースト1

 この場合は「無責」のゾーンが生まれます。つまり、権限が過剰だと、「無責任な意思決定」ができてしまうんです。そうすると、誰も責任を持たない活動が進行することになるので、組織として大変危険な状態に陥ります。

 これら2つのパターンから、意思決定がなされる際には、責任と権限の範囲が一致していることが非常に大事だということがわかると思います。

意思決定でやってはいけないこと・ワースト1

 意思決定においてリーダーが一番やってはいけないのが、「情報収集に時間をかけすぎる」ことです。なぜなら、ビジネスの現場においては、使える時間と労力に限りがあり、100%完璧な情報収集というのはほぼ不可能だからです。

 しかも、意思決定をせずに情報収集をしている間は、PDCAのサイクルが止まります

 たとえば、すばやく意思決定を下すAさんというリーダーと、情報収集を繰り返して意思決定に時間をかけるBさんというリーダーがいたとしましょう。

 Aさんが率いるチームは、意思決定がスピーディーなので、同じ期間内でより多くの「実行→失敗→修正」というPDCAサイクルを回せます。一方、Bさんのチームは、じっくり考えてから意思決定するので、Aさんのチームよりも実践の場数が少なくなります

 この場合、限られた時間の中でどちらの方がより質の高い施策にたどり着くかというと、当然Aさんのチームです。つまり、意思決定において重要なのは「スピード」だということです。

 「じっくり考える=仕事をしている」と捉えられがちですが、実はその間にライバルに先を越されてしまいます。意思決定に時間をかけすぎて失敗すると、「決断できないリーダー」という評判が立って一発で信頼を失うので、気をつけましょう。

すばやく意思決定をするには?

 では、すばやく意思決定を下すにはどうすればいいか。ここで大事になるのが、「絶対にチームに成果をもたらすんだ」というリーダーの覚悟です。

 そもそも、意思決定におけるリーダーの最終責任とは、組織・チームに成果をもたらすことです。

 この責任を「自分が必ず果たすぞ」という覚悟をきちんと持っていれば、周囲からの反発を必要以上に恐れたり、ためらったりして判断を先延ばしにすることはなくなります。

 時間をかけすぎずに、覚悟を持って「決めるときは決める」。このことを徹底しましょう。

(本稿は、シリーズ100万部突破記念『とにかく仕組み化』サミットの内容をダイジェスト化したものです)