冷静な学生ほど
早くから企業に接触

 その原因の一つと考えられるのが、売り手市場という情報を安易に信じ込み、動き出しが遅くなっているケースだ。

 政府が経済・業界団体に要請している就職・採用活動の日程ルールでは、大学3年生の3月1日以降に広報活動開始(応募受付)、4年生の6月1日以降に採用選考活動開始(内々定出し)、10月1日以降に正式な内定としている。

 しかし、実際にこのスケジュール通りに動いている企業はごく一部であり、会社説明会やインターンシップ等といったさまざまな機会を通して、企業と学生の接触は早くから行われている。

 そうした機会をきちんと捉え、自己分析や業界・企業研究を進めてきた学生とのんびり構えていた学生で差がつくのは当然だろう。

 また売り手市場において、従来の中小企業のみならず、大企業の間でも「採用母集団の形成がうまくいかない」という声が増えている。特に理系学生においてその傾向が顕著である。

 ただ、だからといって企業が採用基準を安易に緩めるわけではないことは要注意だ。

「変化の激しい予測不能な時代にあって、企業はイノベーション創出の自主性を備えた多様な人材や、自ら課題を発見して解決していく能力を持った人材を求めています」(日本経済団体連合会SDGs本部長の池田三知子氏)。

 売り手市場という言葉を安易に信じて「自分磨き」を怠ってはいけないのである。

 就職とは、これから始まる長い社会人生活、すなわちキャリアの入り口である。そして、これからの時代において「有名企業、大手企業に入社できれば定年まで安泰」とはいえない。

 いかに自分らしく働き、キャリアを積み重ねていくことができるか。その第一歩を踏み出すための準備期間が就活なのである。

 教育においても生活においても受け身の立場だった「学生脳」から、社会に価値を提供し評価されるために主体的に行動する「社会人脳」への切り替えが必要だ。

 親にとっても、小さい頃から成長を見守ってきた子の就活は子育ての集大成といえる。

 ただし、親世代がかつて就活に臨んだ頃とは状況が大きく変わっている。親としてはそうした状況変化を正しく認識し、今の時代に即した子の就活をぜひサポートしてほしい。