星野リゾート代表 星野佳路氏Photo/Masato Kato
*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)「息子・娘を入れたい会社2024」の「Visionary Leader 『新しい時代の生き方、働き方』」を転載したものです。

コロナ禍が過ぎ「新しい時代」が始まろうとしている。これから社会に出る若者たちは、どんな働き方を目指し、何を指針として会社選びをすればいいのか。希望と共に不安を抱いている就活生や親は多いだろう。「リゾートの革命児」と呼ばれる星野リゾート代表・星野佳路氏が、就活生に向けて理想のキャリアを実現するための指針を語る。(取材・文/柳沢敬法 撮影/加藤昌人)

観光業界は「新しい時代」へと
進まなくてはいけない

——世の中がアフターコロナへと移行している今、就活戦線も売り手市場になっています。星野代表が関わる観光・旅行業界の採用状況は、どうでしょうか。

 確かにコロナ禍で、観光業界は採用を大幅に絞らざるを得ない状況でした。それが、アフターコロナを迎える今、一気に採用活動を再開し始め、観光業界は「人材の取り合い状態」になっています。もちろん観光に限らず、全産業でその傾向はあると思います。

——星野代表はアフターコロナを迎えるこの時期を「長年の目標を実現する最大のチャンス」と考えていらっしゃると聞きます。

 そうですね。私は観光業界に関わって以来、「観光産業を一流の産業にすること」を目標にしてきました。就職活動に臨む学生の皆さんが行きたい業界を選ぶ際、労働時間、給与、福利厚生などの働く環境が決め手の一つになることは当然のことです。ただ、残念ながら、これまでの観光業界がこの部分で他の業界に後れを取っていたことは否めません。

 しかし「観光立国」を目指すのであれば、観光業界の労働環境も他業界の一流企業と同じ、もしくは、それ以上に高めていかなければいけないと考えています。「観光の仕事は休みが取れない」「給与が少ない」といった状況から脱却しなければ、いつまでたっても「観光産業は一流」とは認めてもらえないと思います。

——その課題を解決するチャンスが、今だと。

 インバウンドの回復などで観光需要が高まり、観光業界にも活気が戻ってきた今こそ、労働環境や雇用条件の見直しを一気に進める、絶好のタイミングです。ここで改善に取り組まなければ、観光業界全体が「新しい時代」に乗り遅れてしまいます。

——観光業界にとっては大きなターニングポイントなのですね。

 観光業界の人材採用において、これまでは観光に携わる仕事自体の魅力やマーケットの成長期待度でアピールするしかありませんでしたが、このチャンスを生かせれば大きく好転していくと考えます。私たちは、その先頭を切って取り組んでいきたいと思います。