遠隔での仕事の見える化
カギは「3種の会話」をオンラインで実現すること
石倉氏はリモートワークを上手く回していくためには「コミュニケーションの量と情報の透明性」が不可欠だと話す。石倉氏自身、いろいろな企業の相談を受ける中で「在宅勤務にすることで社員がサボらないか」「どのように業務のマネジメントをすればいいか」といったマネジメントに関する不安を頻繁に聞かれるという。
「姿が見えないことでマネジメントができなくなると考える人は多いですが、それは必ずしも正しくありません。たとえばオフィスにいても自分が1日会議をしていれば、その間に部下がどんな仕事をしていたかはわからない。
実は姿が見えているだけで仕事が見えていたわけではなかった、ということが往々にしてあるんです。まずはその前提を正しく認識することが大切。仕事の見える化はコミュニケーションや情報のオープン化がしっかりされていることが重要で、それは離れた場所にいても十分に実現可能です」(石倉氏)
石倉氏の考えによれば、仕事は大きく「タスク(作業)」と「コミュニケーション」から構成されている。タスクはリモートかどうかにかかわらず、オフィスで働く時と同じようにタスク管理ツールを用いて管理し遂行するだけだという。
リモートでもコミュニケーションするコツ
チャットを「メール」扱いしないこと
一方でリモートの場合に工夫が必要なのがコミュニケーションだ。石倉氏はオフィス内で普段交わされる会話を「業務連絡・報告」「アイデア出しなども含めた相談事」「雑談」の3つに分類した上で、これらの会話をチャットツールやビデオ会議ツールを使いながらいかにオンラインで実現するかがキモになると話す。
「さまざまな企業の方と話をしていると、チャットツールをメール感覚で使っている人が多いことに気づきました。あくまで業務連絡用の手段として使っているため、ちょっとした相談事や雑談をする場所がなくなってしまうんです。それではリモートに移行した途端、一気にコミュニケーションが減り、お互いの状況が見えなくなってしまいます」(石倉氏)
心理的安全性を確保する
チャットツール上での“雑談”
それではチャット上で「オフィスにいるように相談事項や雑談が交わされるような空気」を作るにはどうすればいいのか。キャスターではチャットツールのChatworkやSlackで雑談用のチャンネルをいくつも設けることで、その環境を整えている。
たとえば石倉氏が代表を務めるbosyu(キャスターの子会社)では10人程度のメンバーに対して、雑談用のものだけで数十個のチャンネルをSlack上に作成。パパママチャンネルやサウナチャンネルなどライフスタイルに関するものから、各メンバーが日報よりも細かい粒度で独り言をつぶやく「分報」チャンネルまで幅広い。