「何かあったら一人で溜め込まずに、とりあえず外に吐き出せる環境を用意するようにしています。重要なのは何を言っても大丈夫な雰囲気、いわゆる『心理的安全性』を感じられる空間をチャット上に作ることです。それが定着すると相談事も自然とチャット上で交わされるようになり、会話も増える。何か困ったことがあってもすぐにチャットで共有されれば、早い段階で対応することもできます」(石倉氏)
雑談しやすい雰囲気が根付くと雑談の流れから業務の相談が始まったり、新しいアイデアが生まれることもある。初めから厳密にチャンネルごとでトピックを分けるわけではなく、本格的に業務として話を詰める段階でトピック専用のチャンネルを作成するようにしているそうだ。
キャスターやbosyuでは個人情報などを除き、これらのやりとりを原則としてオープンなチャットグループを通じて行う。チャットベースでのコミュニケーションが活発になると各自の様子が把握しやすくなるので、オフィスで働いていた時よりもむしろ仕事の見える化が進むという。
「リモートになることでその組織の根本的な課題が可視化されるイメージです。姿が見えていただけで十分なコミュニケーションが取れていなかった、誰が何をやっているのか全くわかっていなかったなど実態が見えるようになる。オフィスで勤務していた時は何となくできているという前提で考えがちですが、実はそうじゃないことも多いんです」(石倉氏)
もちろんチャットツールを初めて導入するような場合、慣れるまで多少の時間はかかるだろう。ただ、普段からオフィス内で上述した3種類の会話を気軽に交わしている組織であれば、チャットを上手く使いこなせさえすればリモート環境でもチームをうまくマネジメントしながら事業を進められるという。
リモート環境では「行動ではなく結果をマネジメントする」のが1つのコツ。キャスターでは個々人のミッションと求める結果を予め整理した上で、後はチャットツールを介したコミュニケーションを大事にする以外は基本的にメンバーにやり方を任せているそう。過度に干渉したり、邪魔をしないことでお互いにとって適切な距離感で仕事を進められる環境を意識している。
姿が見えない不安から過度にメンバーを監視するような方向に行ってしまうと、ストレスを感じて働きづらくなるメンバーが出てくる可能性もある。リモートワークを進める上で何かしらの課題が出てきた場合には、マネジメントに対する考え方やコミュニケーションの取り方をアップデートする機会と捉え、思いきったチャレンジをしてみるのがよさそうだ。