「本音」か「建前」かを見破る“シンプルな方法”Photo:PIXTA

国家を守るため極限の状況で仕事をする公安警察。その「禁断の仕事術」を学ぶ全4回シリーズ。最終回は「嘘の見破り方」。スパイを相手にする公安にとって、相手の話が本当か嘘かを見分けることは生死にかかわるほどの問題だ。公安部外事課に所属した経歴を持ち、ドラマ『VIVANT』(TBS)の監修を務めた勝丸円覚さんに「嘘を見抜く観察術」を解説してもらった。(セキュリティコンサルタント 勝丸円覚)

「顔を触る人は何かを隠している」
は本当なのか?

 前回は、公安警察の腕の見せ所である「人脈構築法」について「信頼」できる人についてお伝えしました。公安時代は、人と関係を築くことができた後も、その人が本当は自分のことをどう思っているのか、いつか裏切るのではないかといった懸念は常にありました。そんな私の経験から仕事上の対人関係で活かすことができる「本音を見抜く見破り方」についてお話していきたいと思います。

 相手が本音を話しているか、それとも建前や嘘を話しているのか。見分ける方法の一つに、プロファイリングがあります。相手の言動から相手の心理や人格を読み取って、事件の解決につなげたり、最近ではビジネスの文脈でも顧客の分析に使われたりしているのをご存じの方もいるでしょう。

 プロファイリングと聞いて皆さんはどんなイメージを持たれますか。「ある特徴に当てはまる人間はこういう行動を取る」といったパターンをひたすら詰め込まれるといった想像をされる方もいるかも知れません。しかし、私が実際に受けた講習で話されるプロファイリングは、市販の心理学の本に書かれている程度のものです。

 例えば、「赤色が好きな人は金銭に強い執着がある」とか「顔を触る人は何かを隠そうとしている傾向がある」など、みなさんも聞かれたことがあるようなことばかりです。なので、講習で教えることは一般論であって、それに囚われてはいけないと言われていました。「必ず総合的に判断しないさい」と。

 実習も特になく、講習で学んだことを現場に出て、実践を重ねることで身に着けるしかありませんでした。経験値がものを言う世界でもありながら、最後にものをいうのがセンス。たとえば、車の運転のセンスがない人がある程度までしか上手くならないのと同じように、尾行も盗聴、秘匿撮影といった公安の任務もセンスを要求される場面が少なからずありました。

 プロファイリングの仕方も知識量や記憶力といった要素は大きく影響するものの、それを極められるかどうかは感覚的に向いているかどうかといった観点が非常に重要でした。したがって、得手不得手を早く見極めて、向いていないものは極めることは早々に諦めて、向いているものを極めることが求められました。ちなみに私は秘匿撮影と運転が苦手で、尾行が得意でした。

 センスや感覚といった話だと、FBIの超能力捜査官などもそうです。アメリカの世界に冠たる超一流捜査機関が、こうした非科学的な捜査を取り入れていることに驚かれる人もいますが、こうした柔軟性は日本の警察にはありません。もちろんFBIが科学的でないわけではなく、プロファイリングに関する博士号を持った専門家が職員として勤務しています。日本も鑑識などの科学的な捜査では、FBIに引けを取りません。しかし、科学だけに偏重せず、超能力といった非科学的な手法も取り入れるバランスの良さもFBIのすごいところです。日本の警察がイタコを使っているようなもので、そんなこと許されそうもないですね。