200万円売り上げて報酬ゼロ?「売掛地獄」でもがく“洗脳されるホスト″の実態新宿・歌舞伎町にあるホストクラブの看板広告 Photo by Yuki Tomioka

国会が対策検討に乗り出すなど、急速な動きを見せている「悪質ホスト」問題。女性客の一部は、「推しホスト」を売上ランキング上位に入れるため、風俗で働いてまで彼らに貢ぐとされる。ホスト業界で発展した独自の売掛(ツケ)制度とランキングの関係など、外部からは見えにくい実態を業界関係者に聞いた。(ジャーナリスト 富岡悠希)

ランキング上位に客が集中する
ホストが売り上げを重視するワケ

 詳細な証言をしたのは、ホスト業界と15年以上の関わりがあるAさん。20歳から3年間、東北と北関東でホストとして、多い年は1年間で手取り1500万円ほどの報酬を得た。26歳から33歳までは、同じく北関東のホストクラブで主に店舗責任者を務めた。

 ホストやスタッフが酒に潰れて寝てしまうような「無法地帯」だった店舗を、掃除や挨拶の徹底などの基礎からテコ入れし、売り上げを倍以上にする実績を残した。新宿・歌舞伎町の大手ホストグループで運営スタッフとして半年ほど働いたこともある。現在も、北関東のホストクラブとの関わりがあり業界と近い。

 悪質ホスト問題の報道が増える中、「実態を分かっていない議論になっている」と感じ、メディアに出ることにした。

 ホスト業界を把握するには、売上ランキングの重要さを理解する必要があるという。ホストクラブを宣伝するトラック広告では、「1億突破」や「1500万player」などの数字が踊る。また、どのホストクラブのサイトにも「売上ランキング」があり、ホストが写真やイラスト付きで並んでいる。

 ランキング上位にいるホストは、既に多数の太客を抱えている。ホストクラブに通い始めた女性は、多忙なランキング上位ホストではなく、下位のホストを指名したほうが余裕を持って相手にされそうだ。

 しかし、Aさんによると「そうした下位狙いの女性客は一定層いるけど、接客上手でよりイケメンな上位を新規の女性は気に入ることが多い。そして、彼女たちが本気になると『推し活』として、ランキングアップに貢献し始める」。

 ホスト自身としてもナンバーがつけば箔が付くし、トラック広告や看板も含めて露出が増える利点もある。上位のほうが、より稼ぎやすい仕組みになっている。