200万円売り上げて報酬ゼロ?
ホストの報酬はどう決まるのか

 そして、この売上ランキングに、売掛をどう反映させるかは店舗ごとで異なり、主に3つの方式があるという。Aさんは「一人前のホストと見なせる基準は、一カ月の売り上げが100万円以上」と語った。そのため、売り上げが月100万円の場合を想定して3パターンを比較する。いずれのケースも店が売り上げの50%を取り、残りがホストの報酬となる。

200万円売り上げて報酬ゼロ?「売掛地獄」でもがく“洗脳されるホスト″の実態ダイヤモンドライフ編集部作成

 1つ目が、最もシンプルな「①売掛不計上方式」。現金分だけをカウントする。売上ランキングに100万円を反映させるためには、ホストはすべて現金で100万円を確保する必要がある。報酬も減るし、ランキングにも計上されないので、ホスト側に売掛をするメリットは皆無。できればすべて現金でもらいたいというインセンティブが働く。

 本来、売掛に頼った売り上げ作りは、売掛を踏み倒されることで自分が損をするリスクがあるので、ホストとしても避けたい。しかし、売掛をしても売り上げがそのままランキングに反映される店では、売掛は時に魅力的になる。

200万円売り上げて報酬ゼロ?「売掛地獄」でもがく“洗脳されるホスト″の実態ダイヤモンドライフ編集部作成

 2つ目が、売り上げに占める現金の割合次第で売掛が認められる「②現金ノルマ方式」だ。

 店舗Oでは、売り上げ100万円の場合、現金ノルマは100%で100万円。つまり、売掛はランキング上は1円も認められない。しかし、売り上げが200万円の場合、現金ノルマは80%まで下がって160万円となる。
 
 ホストQは、売り上げ100万円で現金ノルマが100%なのに、20万円の売掛をしてしまった。女性客の売掛は、担当ホスト個人の借金扱いだ。そして、店は毎月の報酬から売掛分を引く。この場合、報酬は本来もらえたはずの50万円から売掛分の20万円を差し引いた30万円となり、ランキングも同じく80万円しか計上されない。

 では、売り上げ200万円で40万円の売掛をしたホストRの場合はどうだろう。売り上げ200万円のとき現金ノルマは80%まで下げられるので、160万円を現金で回収したRはノルマ達成となる。売掛分の40万円はホストの報酬から差し引かれるが、ランキングには200万円が計上される。売り上げが高いホストほど売掛ができる仕組みで、売り上げの低いホストは売掛に制約がかかる。

200万円売り上げて報酬ゼロ?「売掛地獄」でもがく“洗脳されるホスト″の実態ダイヤモンドライフ編集部作成

 3つ目が、「③報酬ノルマ方式」。

 店舗Wでは、報酬がマイナスになっていないかがポイントとなる。

 ホストXは、売り上げ100万円のうち、現金での売り上げが100万円。これは100万円で素直にランキングに反映されるし、Xの報酬は50万円となる。

 ホストZは、売り上げ200万円のうち、現金での売り上げは100万円、売掛が100万円とする。Zの報酬は本来ならば100万円あるが、売掛100万円を引かれゼロ。それでもマイナスではないから、売上ランキングは200万円だ。

 ランキングが一番高いにもかかわらず、ホストZは報酬がない。③報酬ノルマ方式では、このような「ランキング貧乏」ともいえる状態が発生しやすい。

 他方、現金40万円で売掛60万円のホストYの場合はどうか。売り上げは100万円あるが、報酬は本来の50万円から60万円を引いた、マイナス10万円だ。Yは店への借金を抱えると同時に、売上ランキングも100万円から10万円を引いた90万円となる。

 同じく現金40万円、売掛60万円でも②と③の店舗で、ランキングの扱いは変わってくる。③報酬ノルマ方式だと、上記のようにホストYは売上ランキングで90万円を確保できた。ところが、②現金ノルマ方式だと、売り上げ100万円から売掛の60万円を引いた、40万円にしかならない。したがって、②現金ノルマ方式の店舗に在籍するホストの方が、③報酬ノルマ方式の店舗に在籍するよりも、売掛を避ける傾向にあるらしい。

 Aさんによると、①から③の順で健全なお店だと言うことができるとのこと。売掛をするインセンティブが強まるほど、客もホストも苦しむことになる。