世帯形成した子の、親との居住関係の時系列推移について、この20年間の長期トレンドとしては、少子化が進み、1つの子世帯が、夫側・妻側両方の親世帯の面倒を見(あるいは面倒を見られ)る割合が増えたこと、ボリュームゾーンである団塊世代が集団就職により大都市に出て「ニューファミリー」として世帯形成し、親世帯の住む家が集合住宅などの同居に向かない住居形態である割合が増えたこと、子世帯のボリュームゾーンであった団塊ジュニアが、自分の部屋・自分の空間を与えられながら育った個人主義の強い世代であること、などを背景に、同居割合が減少していた。

 親との同居割合は団塊ジュニア世代からバブル世代が子世帯としてのボリュームゾーンを構成していた頃の1997年の35%から大きく下落し、2021年には19%となった。代わりに増えたのが、「徒歩圏内」、「交通機関を使って1時間以内」で行き来できる「近居・隣居」である。

 NRIでは、親世帯と子世帯が片道1時間以内ぐらいで行き来できる距離に住む形態を取っている家族を、日常的に緩やかにつながりながら経済的・精神的にも支え合うような関係性であることから、「インビジブル・ファミリー(見えざる家族)」と呼んでいる。

 過去四半世紀に及ぶ経年調査では、この「インビジブル・ファミリー」は増加を続けている。「インビジブル・ファミリー」は一見、別世帯であるが、消費活動は共同で行うことも多い。

 孫のために祖父母がランドセルを買うといった消費は想像しやすいと思う。親世帯と子世帯で一緒に外食やレジャーに行くことを考えて多人数乗りのミニバンやSUVを購入する、遊びにくる孫のためにゲーム機を祖父母の家に用意しておくなども親世帯・子世帯間の共同消費の例である。この共同消費の金額は馬鹿にできない。

書影『データで読み解く世代論』(中央経済グループパブリッシング)『データで読み解く世代論』(中央経済グループパブリッシング)
林 裕之 著

 人からの評価やブランド志向が高いバブル層は、良いものを孫に与えよう、という気持ちが強く、これまで以上に「孫消費」の単価が上がることが想定され、シニア消費の重要性が高まるだろう。

 孫へのランドセルやプレゼントといったモノだけでなく、旅行や外食といったコトも含め、こうした「孫消費」ニーズの傾向は世帯単独で見るだけでは捉えることはできない。マーケティングには世帯間の緩やかなつながりを意識したターゲット像の見直しやニーズの再整理が求められる。

 特にシニア予備軍となるバブル世代に向けては、子どものため、孫のために何をしてあげられるか(何を買ってあげられるか)をうまく理由付けし、後押しすることで、今後の消費はさらに活性化されるだろう。