スタッフの心のケアも
万全なぬいぐるみ病院
ぬいぐるみ病院が行う心のケアや高度な技術、スタッフたちのぬいぐるみ愛がSNSで話題を呼び、HPに問い合わせが殺到。現在も月に200~300体ものぬいぐるみを治療しているが、数年待ちの状況が続いているという。
そうしたハードな状況でも、堀口氏は「質の高いサービスを提供するために心がけていることがある」と語る。
「当院では、スタッフの心身の健康を第一に考えた職場づくりを強く意識しています。患者さまの安全を確保し、お客さまの心をケアするには、スタッフ全員が安心して働ける環境でなければなりません。仕事自体のプレッシャーが大きいうえに、ブラックな労働環境では、取り返しのつかないミスにつながります。また、ナースが行う心のケアに関しても、忙しさでお客さまの不安に寄り添えなくなるのは本末転倒。だからこそ、ホワイトな職場でなければならないんです」
同院では月に一度、プロのカウンセラーを迎えてスタッフのメンタルケアを行ったり、キッチンカーを呼んで健康に気遣う食事をふるまったりと、さまざまな福利厚生を提供している。ホワイトな職場が、治療のクオリティーを維持するカギなのだ。
堀口氏は2022年に「日本ぬいぐるみ医師会」を発足し、新たな取り組みをスタートした。同会では、ぬいぐるみにマイクロチップを埋め込み“迷子のぬいぐるみ”を減らす活動や、医療レベルの維持を行い、「ぬいぐるみ医療業界」全体の発展につなげる予定とのこと。
「ぬいぐるみ医療業界が盛り上がり、当院と近しい感覚を持った専門病院やお店が増えれば、より多くの人が安心してぬいぐるみの治療を依頼できるようになるはず。私たちの目標は、日本中、世界中のぬいぐるみの命を救うことなので、これからも技術の向上に尽力しつつ、ご家族の心のケアに取り組んでいきます」
ぬいぐるみ病院が癒やすのは、ぬいぐるみとその家族。一人ひとりの声に耳を傾ける真摯(しんし)な姿勢こそが、ぬいぐるみを愛する人々に支持されている理由なのかもしれない。