「もしトラ」でガザ・ウクライナは見殺し?韓国も危機?トランプ再選リスク検証【池上彰・増田ユリヤ】2023年12月16日、米ニューハンプシャー州ダーラムのニューハンプシャー大学で開かれた集会で、支持者の群衆に演説する共和党のドナルド・トランプ前米大統領 Photo:EPA=JIJI

ウクライナ戦争に続いてガザ紛争が起こり、国際情勢は混迷を極めているが、2024年はどんな年になるのか。ジャーナリストの池上彰氏と増田ユリヤ氏に聞いた。(ジャーナリスト 池上 彰、増田ユリヤ 構成/梶原麻衣子)

トランプ氏の大統領返り咲きで
最も打撃を受けるのはパレスチナ

増田 ロシアによるウクライナ侵攻は間もなく開始から2年目に突入し、イスラエルとハマスの争いも、3カ月目に入りました。2024年はどのような年になるでしょうか。

池上 何と言っても注目は「もしトラ」でしょう。「もしトラ」は、24年11月の米大統領選挙で「もしトランプ前大統領が再び大統領に返り咲いたら」を略した言葉です。

増田 「もしドラ」(岩崎夏海著『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』の略称)をもじったものですね。

池上 はい。米国政治は国際情勢の全てに影響を及ぼしますから、24年を占う上で米大統領選の動向は外せません。

増田 このまま「もしトラ」が実現したら、最も打撃を受けるのはパレスチナ。在職中に在イスラエル米大使館をエルサレムに移したトランプ氏ですから、情勢の悪化は避けられません。そもそもバイデン政権でも、イスラエルを制止することはできていませんが。

池上 イスラエル政府とパレスチナ当局は23年11月下旬、戦闘を7日間休止しました。それも程なく再開され、ガザ地区の被害は拡大する一方です。12月8日には国連安全保障理事会で即時停戦案の採決があり、15の理事国のうち日本やフランスなど13カ国が賛成したにもかかわらず、米国が拒否権を発動し、否決されました。

増田 ましてやトランプ政権が実現したら、一体どうなるのか……。

池上 イスラエルの動向は、米国国内のユダヤ人たちの意向にも影響を与えます。米国のユダヤ人は、国内の政局に大きな影響力を持っており、民主党であれ共和党であれ、献金や票で力を持つユダヤ人社会を無視することはできません。これまで何度も米大統領選挙を取材しましたが、民主党と共和党、どちらの大会でも「われわれはイスラエルと共にある」という旗が掲げられたり、缶バッジが売られたりしています。

増田 ただ今回は、米国国内も一枚岩ではありません。