東大卒の相談者が泣き崩れた瞬間

 最終的にAさんは、なぜ母親を施設に入れると決心が付いたのか? そのきっかけは意外なものでした。

 よくよく話を聞いてみると、彼は月額14万5000円までなら負担できると言うのです。それであれば生活保護を受けなくても余裕で施設に入れる、と伝えたところ、驚いたことに彼は、声を上げて泣きながらその場に崩れ落ちたのです。号泣も号泣、大号泣でした。いつも彼が行きつけにしているビストロの個室で会っていたのですが、本当に個室でよかったです。

 それは、彼がはじめて感情をあらわにした瞬間でした。泣きじゃくりながら、繰り返し繰り返し、自分の情けなさを口にしていました。それから30分は話になりませんでした。でも、涙が枯れた後に今後の進め方についてガイダンスすると、すんなりと納得してもらうことができました。

 彼には二つの選択肢を提示しました。具体的には、「都内の(特別養護老人ホームか介護老人保健施設の)多床室施設」と、「遠方にある民間施設、サ高住(医療法人が経営する、サービス付き高齢者向け住宅)の個室」です。結局、彼は南九州のサ高住を見学に行くことにし、同時に母親のショートステイの手配をしました。