仕事でタブー視される「逃げる」「スルー」が実は大切なスキルである理由写真はイメージです Photo:PIXTA

ビジネスシーンでは、時に、信じられないことや理解不能なことが起こることがあります。この「とんでもないこと」に1つ1つ向き合っていたら体と心が持ちません。今回は、現代のジネスパーソンに必要なスキル「スルー力」と「逃げる力」の2つを紹介します。

※本稿は、高瀬敦也『スキル』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を抜粋・編集したものです。

スルー力

 私が起業後に最も向上させた力は、このスルー力かもしれません。「スルーする」というのは一般的に「無視をする、気にしない」のように理解されていますが、ここでいうスルー力も同様の意味です。「ビジネスシーンでスルーする」のは、ルール違反やマナー違反のように感じるかもしれません。しかし現代のビジネスではこのスルー力は本当に必要なスキルなのではないかと感じています。

対処しないという対処

 ビジネスをしているといろいろなことが起こります。信じられないこと、予期しないこと、自分の価値観では理解不能なことが起こります。これらの「とんでもないこと」にひとつひとつ向き合っていたら、体と心が持ちません。

 私も起業後たくさんの信じられないことが起こりました。「取引先と突然連絡がとれなくなる」「雇っていた人が急にいなくなる」「契約内容が無視される」「味方だと思っていた人が知らない間に敵になっていた」などなど。意図しているのか天然なのか分からない摩訶不思議なことが日常的に起こります。こうしたことは、実は経営者や長くビジネスをしている人であれば“あるある”です。

 ビジネスにはたくさん喜びがありますが、同じだけショックなことや嫌なことが起こります。こうした「とんでもないこと」に対処していくのがビジネスです。しかし「対処しない」ということもビジネススキルには存在するということをお伝えしたいと思います。ただ、「まったく対処しない」と言うことではありません。「対処しないという対処」をするのです。実は意外なことに「とんでもないこと」ほど少し時間がたつと、勝手に終息したり好転することがあります。「対処することを前提」として、「これはどう対処するか判断するためにも、スルーしてみよう」というイメージです。

 真面目な人ほど「とんでもないこと」にもすぐに対処しようとします。そういう人こそ「一旦スルー」をお薦めします。言葉を置き換えるなら、ペンディングとなりますが、冷静になったり心を落ち着けたりする時間を持つということでもあります。