スルー力とはつまり「情報を選択する」ということです。上司からの叱咤もフォロワーからのマウンティングも情報です。現代はとにかく情報で溢れていますし、獲りにいかなくても目や耳からどんどん入り込んできます。能動的に獲りに行った情報に対しては、「どんな内容でも受け取る精神的な準備」ができていますが、パーソラナイズやアルゴリズムで最適化された(と思われる)情報は、無意識のうちに受け取ることになります。ある意味で「無防備な状態」で体に入ってきますから、それがネガティブなものだと受けるダメージも大きくなります。

 身の回りのたくさんの出来事すべてを情報と捉えて、意識的に選択する。どう考えても「異常なとんでもないこと」に関しては意識的にスルーする。意識的にスルーすることで、自分や相手に冷静になる時間や再考する余地をつくる。結果としてムダな時間や労力を減らし精神的に健全でいること、それが「スルー力」というスキルです。

逃げる力

「逃げる力」なんてビジネス書ではあまり馴染まないかもしれません。多くの場面では「仕事を変える」とか「会社を変える」とか「環境を変える」などの言葉に変換されるでしょう。しかし、このような言葉になると「現実にはそんな簡単に変えられないんだ」と難しく捉えられがちです。実行できたとしても真面目な人なら「それって逃げてるだけなんじゃ」と自己否定してしまうかもしれません。だから敢えて「逃げる力」をビジネススキルと表現しました。逃げるというのは悪いことではなく、むしろ良いことで立派なビジネススキルです。

「逃げる」という生存戦略

 私はたくさん逃げてきました。新入社員のころは、怖い先輩と飲みにいくのが嫌で、いろいろな理由をつけては逃げていました。中堅社員になってからも、プレッシャーのかかる取引先の担当から逃げたくて、その仕事ができないフリをしたこともあります。起業した大きな理由のひとつに「会社員当時の自分を取り巻く環境から逃げたかった」ということもあります。