具体的な例では、SlackやLINEなどのチャットツールで連絡が来た際、むやみに対応せず保留します。例えば、怒っている相手からLINEが来たときや、複雑な案件が舞い込んできたときを思い浮かべてください。怒っている相手に何気ない一言を返して火に油を注ぐことになったり、複雑な話を呑み込めていないのに無防備に返信して、ややこしくなった経験があると思います。こういうときは一旦ボールをキープするのも対処です。

「ボールは抱えないほうがよいのでは?」と思う方もいるかもしれません。たしかにマルチタスクをこなす心構えとして、ボールを早く打ち返したり、誰かに渡したりする意識は大切です。ただ、それは通常のビジネスシーンでの考え方です。ここでのお話はあくまで「とんでもない」ことへの対処の仕方です。手元に来たボールを自分だけで持ち続けるのが不安な場合は、関係者や上司と共有するのもよいでしょう。

 また、返事が来ないと、相手は「なぜ返事が来ないのか」と考えますよね。一部のチャットツールでは“既読や未読”も分かったりします。もし相手が怒っていた場合、「自分が言い過ぎたのではないか」と考えてくれるかもしれませんし、難しいことを言ってきた相手は「自分の伝え方が悪かったのかな」と考え直してくれるかもしれません。「一旦スルーする」ことは、「相手に再考の余地をそれとなく与える」というコミュニケーション技術でもあります。

情報を選択する

 最近のビジネスシーンではたくさんの情報が飛び交っています。優秀なビジネスパーソンほど情報を浴びていますし、情報が集まってくる人こそ優秀な人の証でもあります。しかし情報は自分に有益なものばかりではありません。ストレスになったりトラップになったりすることも混ざっています。

 最近ではSNSから届くメッセージやリプライがストレスになるケースがよくあります。所謂「クソリプ」と言われるような「心をザワつかせる反応」があって傷ついた経験のある方も多いでしょう。他には、ただタイムラインを追っているだけでも、「自分が落ち込んでいる時に他人の幸せそうな生活を見てしまい、一層気持ちが暗くなる」なんてこともよくありますよね。高度な情報社会を生きる上で、スルースキルを持たなければ平常心でいることもままならなくなります。