立法院長は誰になる?
野党第1党の国民党は一致団結しているが……

 この原稿を書いている1月下旬現在、各政党は立法院長と副院長の候補者選びに奔走しています。立法院長と副院長が誰になるのかは、113議席ある立法委員の無記名投票で決まりますが、その結果は予測が難しい状況です。

 113議席の内訳は、民進党が51議席、国民党が52議席、国民党寄りの無所属委員2議席(山地原住民立法委員・高金素梅氏と、苗栗県第1選挙区・陳超明氏)ですが、いずれも民衆党との連立政権の構築には消極的です。これに対し、8議席の民衆党は「国会改革を支持すれば賛同する」と述べているものの、各政党から立法院長と副院長の候補者が擁立される方向に動いているため、選出結果の予測がさらに難しくなっています。

 まず、1月18日、第1野党の国民党の韓国瑜氏が名乗りを上げ、副院長候補には民進党政権下で国防・外交委員に選ばれた江啓臣氏(前国民党党首)にほぼ確定しました。ただし、江啓臣氏は、香港民主運動への支持者で、92コンセンサス(※)を見直す考えも持ち合わせています。

 中国での留学経験もある韓国瑜氏は、前回2020年台湾総統選挙で民進党・蔡英文氏の対抗馬であり、当時まだ高雄市長でした。総統選挙に敗北した後、高雄市長としても罷免(リコール)住民投票により失脚して鳴りを潜めていましたが、ここにきて、同氏は高雄市長選に勝利した頃の勢いを取り戻しています。韓国瑜氏を候補に立てることについて、一時、国民党内でも異論が噴出していましたが、朱立倫党首は早々に造反の可能性にくぎを刺し、韓国瑜氏の擁立姿勢を明らかにしています。

 このように、国民党は一致団結し、立法院長の座を奪い取る勢いです。ただし、韓国瑜氏が院長候補に名乗りを上げた日、記者の囲み取材時に、開口一番「三立は来ているのか」と名指しで攻撃的な発言をしました。これは、台湾の三立テレビ局(三立電視台)が、かつて2020年台湾総統選挙時に、選挙の政見発表会で公然と同局を批判したことに対し、名誉棄損で告訴した同局は敗訴し、韓国瑜氏が不起訴となった出来事を指しています。「韓国瑜氏のような感情的な言動は、政治家としてあるべき姿ではない」という批判も出ています。

※92コンセンサス…1992年、中台双方の窓口機関の間での事務レベルの折衝過程で形成されたとされる。中国側はこれを「一つの中国原則を口頭で確認した合意」と解釈し、台湾の国民党は「一つの中国の中身についてそれぞれが(中華民国と中華人民共和国と)述べ合うことで合意した」と解釈している。民進党の蔡英文主席(2012年当時)は、合意文書が存在しないこと、中国が台湾側の解釈を公式に認めていないことを理由として、それは「存在しない」と主張した。