総予測2024#14左から柯文哲氏、頼清徳氏、侯友宜氏。野党候補一本化は決裂、選挙戦は三つどもえに 写真提供:小笠原欣幸氏(侯友宜氏は本人のfacebookから)

2024年に国際的な大型選挙が相次ぐ中で、その先陣を切るのが1月に控える台湾総統選だ。中国・習近平国家主が台湾統一をもくろむなど台湾は外交上の難題を抱えており、次期トップ次第で台湾周辺の情勢は大きく変化しうる。特集『総予測2024』の本稿では、その選挙情勢と各候補が当選した場合の対中シナリオについて解説する。(東京外国語大学名誉教授 小笠原欣幸)

「週刊ダイヤモンド」2023年12月23日・30日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

総統選は与党が優勢か
野党候補も追い上げ

 2024年は世界各地で大統領選挙が行われる。その先陣を切るのが24年1月13日投開票の台湾総統選挙だ。次の4年間の台湾トップが誰になるのか、米中にとっても日本にとっても非常に大きな関心事だ。

 選挙戦は与党・民主進歩党の頼清徳候補(副総統)、野党・中国国民党の侯友宜候補(新北市長)、台湾民衆党の柯文哲候補(前台北市長)の3人の争いとなることが確定した。23年11月の立候補届け出の直前に、野党候補の一本化で選挙情勢が一変しそうな大きなドラマが発生した。だが、野党連合の交渉は結局決裂、選挙戦は与党候補に対し野党候補2人が挑む野党分裂の構図になった。

 世論調査の動向を見ると、23年4月以降、頼氏が支持率1位の独走態勢であった。ところが、野党連合の議論が活発になった23年10月以降は、頼氏の支持率がじりじりと下がり、野党候補の支持率がじわりと上がってきた。3人の争いが確定した時点で、頼氏の支持率は1位を維持しているが、2位との差は狭まった。23年11月末の台湾のテレビ局TVBSの支持率調査では、頼氏34%、侯氏31%、柯氏23%であった。

 野党一本化は失敗したが、交渉の過程が高い関心を集め、その副産物として「政権交代を」という野党のアピールが拡散した。

 台湾ではもともと「長期政権は腐敗・非効率を招きやすいので政権交代が必要」との民主主義観が広く浸透している。このため、民主化後は陳水扁政権(民進党)が8年、馬英九政権(国民党)も8年で交代してきた。今回、蔡英文氏の民進党政権が8年たち「変え時」という雰囲気もある。ただし、蔡政権はこれまでの陳政権、馬政権とは異なり、比較的高い政権支持率を維持してきた。

 3人の争いという構図は与党に有利であることは間違いない。だが、野党も「政権交代」のアピールで攻勢を強め、特に国民党には勢いが出ている。情勢は注視が必要だ。

次ページでは各候補が当選した場合の中台関係の動向について詳しく解説する。また、中国は台湾統一の考えを強く打ち出している。筆者は、中国による軍事侵攻のハードルは高いとしつつも、大きな変数として米国大統領選が影響を与え得ると指摘する。その理由についても詳説していこう。