ドラマ「セクシー田中さん」問題の、失敗の本質を探ります。日本テレビと小学館は、どのような再発防止策をとるべきでしょうか。ドラマ制作と漫画執筆をプロジェクトマネジメントとして分析して考えます。(トライズ代表 三木雄信)
ドラマ「セクシー田中さん」
原作者の漫画家死去の波紋
日本テレビで放送されたドラマ「セクシー田中さん」の原作者である漫画家の芦原妃名子さんが亡くなりました。その少し前にインターネット上でドラマの脚本家と原作者である漫画家、双方が異なる主張を発信していたことから、大きな騒動となっています。
一連の問題を受けて「脚本家が原作者に対してリスペクトがない」といった声がメディアやSNSで湧き上がり、一部では誹謗(ひぼう)中傷も起きているようです。しかし私は、脚本家と原作者の対立とか、リスペクトがないといった感情論は本質的な問題ではないし、個人を責めるのも違うと思います。
それでは何が問題の本質か。結論から言うと、「テレビ局によるドラマ制作というプロジェクトの失敗」です。脚本家はプロジェクトのいちメンバーに過ぎません。
プロジェクトとは、「一時的な取り組みで、特定の成果物を生み出すための作業の集まり」を指します。ドラマ制作は、まさしくプロジェクトです。基本的には1クール(3カ月)ごとに、10話前後を新しく作り上げていく作業であり、ルーティンワークはほとんどありません。
また、漫画の執筆もプロジェクトといえるでしょう。毎週、毎月と媒体の発刊の頻度に合わせて、ゼロから執筆していきます。こちらもルーティンワークでは全くないはずです。
しかし、ドラマ制作と漫画の執筆というプロジェクトをマネジメント(管理手法)として分析してみると、圧倒的に違う点があります。