ノウラ・バーローシャさんの陣痛が始まったのは12月の寒い夜だった。パレスチナ自治区ガザ北部にある避難先の建物の中にズドンという重苦しい砲撃音が響いた。救急車を呼ぼうにも携帯電話の電波が届かない。かといって外に出るのは危険すぎる。「とても怖かった。病院までたどり着けないと思った。破水して、いつ生まれてもおかしくない状態だった」とバーローシャさんは振り返る。他の4人の子どもは病院で産んでいる。ただ過去にガザで戦争が起きたとき、医師が妊婦の自宅で赤ちゃんを取り上げるのを目撃していた。「他に選択肢がなく、昔見たことを必死に全部思い出そうとした」。義理の姉がへその緒を木製の洗濯ばさみではさみ、料理用のはさみで切るなどして男児アダムちゃんの出産を助けてくれた。
公衆トイレで出産も ガザの妊婦に苦難続く
必要なケアを受けられない女性たち、苦痛や危険は通常の出産の何倍にも
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