写真:旭橋駅停車中の3両編成の列車旭橋駅停車中の3両編成の列車(筆者撮影)

先日、私用で9年ぶりに沖縄を訪れた。鉄道を目的とした旅行ではなかったが、沖縄赴任中の懇意の記者に「今夜、ゆいレール増備車の陸送がありますよ」と教えてもらったので、2月13日深夜、那覇港から那覇空港駅近くの車両基地までトレーラーで陸送される様子を見てきた。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

インバウンドがけん引役となり
「ゆいレール」の利用者が急増

 太平洋戦争末期の沖縄戦で沖縄県営鉄道が破壊されて以来、鉄道が存在しなかった沖縄に58年ぶりに誕生したのが沖縄都市モノレール、愛称「ゆいレール」だ。筆者が前回訪れた時は那覇空港~首里間12.9キロの運行だったが、2019年10月に首里~てだこ浦西間6.1キロが延伸開業。また2020年3月からSuicaなど全国共通交通ICカードも利用できるようになっており、着実に進化している。

写真:那覇港から出発したトレーラー那覇港から出発したトレーラー(筆者撮影)

 ゆいレールが開業した2003年度(8月開業)の1日あたりの利用者数は約3.2万人だったが、2015年度は約4.4万人、2018年度は5.2万人と順調に増加。沖縄三大祭り「那覇大綱挽」の開催日は最大8万人にも達するという。地元の認知度が向上し、通勤・通学、私事の足として定着したことが大きいが、もう一つのけん引役と言えるのがインバウンドだ。

 沖縄県の訪日外国人旅行者数は2011年に約30.1万人だったのが、2015年に約167万人、2018年には約300万人と爆発的に増加。今回の訪問ではインバウンドが戻り切っていない状況にあっても、大きなスーツケースを転がす旅行者が那覇空港に向かう姿を多く見かけた。

 これらが相まって、コロナ前、朝ラッシュ時間帯の平均乗車率は120%、列車によっては170%に達していたが、既に4分間隔で運転しており、これ以上の増発は困難だった。そこで2019年4月、開業以来2両編成だった車両の一部3両編成化を決定したというわけだ。

 駅構造物は将来的な3両化を見越していたため、ホームの延長工事などは必要なかったが、車両基地の増設など大がかりな工事が行われた。3両化するのは全23編成中9編成で、混雑時間帯に集中投入する。最初の編成は開業20周年記念日の2023年8月に営業を開始しており、2025年度までに導入を完了する予定だ。

 定員は165人から251人まで増加する。今回、筆者が9時台に乗車した那覇空港行き列車がたまたま3両編成だったが、各車両ともそれなりに混雑しており、これが2両に押し込められたらかなりの密度になると感じた。

 3両化決定直後のコロナ禍は大きな誤算だっただろうが、2024年のインバウンドは日本全体で過去最多となる3000万人以上と予測されているように急速に回復しており、一安心というところだろう。