アルザス料理といえば
煮込み料理の「ベッコフ」
アルザス焼きの陶器を使った料理といえば、煮込み料理が有名です。アルザス語で[ベッコフ(Baekeoffe)]と呼ばれ、アルザス焼きの鍋に蓋が付いて出てくるのが特徴です。これはもともと、アルザス人の主婦が、家中の洗濯物を月曜日に1日がかりで洗濯する習慣があることから始まったと言われています。
昔は、現在のように洗濯機に入れてポイ!というのではなく、手でひとつずつ洗うという大変な家事だったため、月曜日は夕飯の支度など到底できなかったのでしょう。そこで、前日(日曜日)のうちに、残り野菜やお肉を白ワインに漬け込み、翌日、洗濯場に行くついでに、近所のパン屋に鍋ごと預けました。朝早くにパンを焼き、昼過ぎに仕事の終わるパン屋が、ベッコフ鍋の蓋との継ぎ目をパン生地でふさぎ、かまどにくべておきます。それを、洗濯を終えた主婦たちが受け取り、そのまま月曜日の夕飯のメインディッシュにするわけです。これが、そもそも[ベッコフ]の由来と言われています。
さすがは主婦!手抜き家事を見出す天才ですね。ベッコフ鍋で作られた料理は、全て[ベッコフ]と呼ばれます。「お相撲さんが作った鍋は全部ちゃんこ」みたいなものでしょうか(笑)。魚の煮物が出てきたり、ビーフシチューもどきもあり…と、蓋を開けてびっくり!ですが、どれも[ベッコフ]なのです。
カイゼルスベルグにあるオーベルジュ[ル・シャンバール&スパ]では、フォアグラのベッコフが食べられます。こってりしているイメージのフォアグラも、ミシュラン1つ星の腕を持つシェフの手にかかれば、シンプルな味付けのベッコフになり、高級な洋風おでんに早変わりします。美味しいですよ!