ウェブサイトを利用して航空券とホテルを予約。旅先で好みに合った現地ツアーに申し込み、自分なりの楽しみを満喫する。そんなスタイルが、旅慣れたビジネスパーソンの主流になりつつある。

“カスタムメードツアー時代”を反映して、旅行関係のマーケットプレイスは、昨今ますます活況を呈している。シリコンバレー発の「Vayable」は現地の個人ガイドを探せるサービス。対象エリアは世界全域にわたり、1500人以上のガイドが登録されている。

SideTour」は、ニューヨークを中心に体験旅行を提供。作家やアーティスト、ミュージシャン、料理人などが案内役となり、ニューヨークのカルチャーシーンを体験するツアーが評判だ。予約開始早々に売り切れる人気プランも少なくない。

 旅の楽しみは現地の人と出会い、楽しみを共有することにある――そんなコンセプトをもとに、東南アジアで個人ガイドサービスを展開しているのが「Voyagin」。昨年12月にリリースされ、現在、インド、ベトナム、インドネシア、タイ、日本を中心に350を超える現地体験ツアーを提供中だ。

東南アジアのユニークな旅行体験を提供するマーケットプレイス「Voyagin」

 Voyaginのツアーは、かなりマニアックと言ってよい。たとえば、インドを見てみると「本物のムンバイは洗濯屋でわかる! ムンバイで洗濯屋見学ツアー」「インド超常現象協会と訪ねる怪奇現象ツアー」。「タイで象使いになれる2日間」では、実際に動物園で象使いとして活躍する男性がガイド兼講師を務める。他にも「サパ渓谷と少数民族を訪ねる1日自転車ツアー」(ベトナム)、「アグニ・ホトラ(ヒンドゥ教の聖なる火の儀式)見学ツアー」(インドネシア)など、趣味性と冒険色の強いツアーが並ぶ。

 旅行代理店発のオプショナルツアーに比べ、価格はリーズナブル。途上国の人びとに直接還元できるプラットフォームとして、社会貢献的な側面も併せもっている。

 以前、当欄で同様のソーシャル旅行サービス「Meetrip」を取り上げたが、Voyaginは、ツアーガイドの選定に運営側がハードルを設けている点を強調する。「サービスの品質を保つため、ホスト(ガイド)の登録に際し、対面もしくはスカイプにて面談。インタビューした上で、人柄やツアーの品質に合格点をつけたものだけを掲載しています」と、運営に当たるエンターテイメント・キック株式会社の高橋理志CEOは語る。C to Cの個人間取引ではあるが、運営側が一定の品質を担保することにより、安心感のある旅を提供可能にしている。

 旅というものは、内容もさることながら、ガイドの人柄によって感動の深さが変わってくるもの。Voyaginでは、ガイドの経歴、ツアーへの思いをサイト上に掲載。質問や気になる点があれば、メールで直接質問をすることもできる。そのやりとりから、自分とフィーリングが合うか否か判断をした上で申し込めば、失敗も少ないだろう。

 じつは、日本もVoyaginのフィールドのひとつだ。語学のたしなみがあるビジネスパーソンは、趣味を生かしたツアーを企画し、週末ガイドに挑戦してみるのもおもしろい。ガイドは、個人、団体など誰でもエントリーが可能。現在、掲載料金は無料。予約購入が成立した時点で15%のコミッションが発生するシステムになっており、集客、決済、顧客管理は運営側がサポートしてくれる。

 もっと気軽に使いたいという方は、日本で開催されるツアーに参加するという手もある。来日した外国人と体験を共有することで交流が図れ、ちょっとした語学レッスンにもなる。知らなかった日本を発見できるかもしれない。

 パッケージツアー全盛時代にはなかった“旅の多様性”が、今さまざまなウェブサービスによって実現されつつある。人生の1ページを、カラフルにしてくれる旅のサービスを、うまく活用したい。

(吉田由紀子/5時から作家塾(R)