東大生の就職先としても注目され、人気が高いコンサルティングファーム。一流のファームでは、どんな採用基準で人を見ているのか?『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』の著者であり、コンサルティング業界に特化したエージェントとして、17年間転職支援をしてきた久留須 親(くるす ちかし)氏に聞いた(書籍から一部を抜粋・編集して掲載しています)。

 受かるための戦略を紹介する前に、「コンサルティングファームに入社したい」と思っている人がしてしまっている「勘違い」に触れておきます。こちらは、コンサルティング業界について、情報収集を始めた人ほど陥りやすいものです。

勘違い① ファームの転職・就職活動を「受験勉強と同じ」と捉えている

 最初にぜひ知って欲しいのが「カルチャーフィット」の重要性についてです。
 経営戦略系、総合系問わず、ファームの「難易度」は決して大学受験の偏差値ピラミッドのようなものではありません。

 ピラミッド的な考え方だと「マッキンゼーの難易度が一番高く、マッキンゼーに受かる人は他社も全部受かる」と思いがちですが、実際には「マッキンゼーにしか受からなかった」という人が多いのが実状です。これは、各ファームがカルチャーフィットもしっかりと見ていることが理由かと思います。フィット感がない場合は、スキルがある程度評価できても採用を見送ったり、評価が低くなるような採用基準になっていたりします。

 特に、Top-tier(トップティア)と呼ばれるマッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン コンサルティング グループ、ベイン・アンド・カンパニーは紛れもないグローバルエクセレントカンパニーですから、この3社が持つカルチャーは極めて強固で「三社三様」です。この3社全てからオファーを得た人は、私の17年の経験の中でも数人しか見たことがありません。他のファームにも、それぞれカルチャーや企業カラーがあります。商社や広告代理店、メガバンクのように、「同じ業界でもカルチャーや企業カラーが全く違う」というのと同様です。

 ここで大事なことは「偏差値的な考えで志望度を決めない」ことです。なぜなら「自分が行きたいファームが自分に合っているファームとは限らない」からです。実際、あるファームではうまくパフォームできなかった人が、ファームが変わるだけで水を得た魚のようにハイパフォーマーになった、という例を数多く見てきました。

 多くの人が大学受験を経験しているため「偏差値的に考えてしまう」ことは理解できます。しかし、「転職の目的はファームに入社することではなく、コンサルタントとしてパフォームすること」です。「オファーを獲得したファームが自分にフィットしている」と考える人が、最終的にうまくいきます。
「自分が行きたいファームから是が非でもオファーを獲得する」と考えるのではなく、「オファーを獲得したファームが自分にフィットしている」と考えるようにしてください。

勘違い② 面接で「ケース対策だけが重要だ」と思っている

 次に知って欲しいのが「ケース対策『以外』の重要性」についてです。

 コンサルティングファームと一般企業との一番の違いは、「ケース面接(あるお題を出され、それについて自分の考えを述べるコンサルティングファーム特有の質疑応答)」があることです。それゆえ、ある程度ファームのことを調べた求職者と話していると、真っ先に「ケース対策」について聞かれることが多いです。たくさんの対策本が世に出回っており、有料でケース対策を行うサービスまであったりしますので、「もう何が何でもケース対策」となってしまう人が多いのもわかります。

 しかし、「ケース対策だけをすれば受かる」と考えるのは、明らかな勘違いです。むしろケース対策「以外」にも目を向けることこそが、コンサルタントへの転職を成功させるポイントなのです。
つまり、ケース対策と同様「通常質問対策」もとても重要で、それぞれの重要性は全く同じ5:5と考えてください。

 その理由は、ファームが本質的に見ているのは「コンサルタント的な考え方ができるか」だからです。

勘違い③ 「業界研究を入念にしよう」と思っている

 この本を読んでくれているあなたは、真面目で熱心な方だと思います。ファームを受ける前に、入念な業界研究をしようと考えているかもしれません。「事前の業界研究」は一般企業への転職・就職活動ならとても大事なことなのですが、コンサルティングファームについては当てはまりません。

 コンサルティング業界への転職活動の場合は特に「実際に活動を始めてみる」ことがとても大事です。その一番の理由は「転職活動自体が、業界研究になるから」です。

 一般的な転職では、独力であってもある程度の見通しを立ててから転職活動を始めることができます。一方で、コンサルタントへの転職では、外部に出ている情報が少なく、いくらパソコンに向かって調べても、なかなか理解が深まりません。結果「転職できるだろうか」「自分には向いていないかも」と二の足を踏んでしまっている人も多いのが実状です。しかし、それはとてももったいないことです。転職活動を始めてみることこそが「自分がコンサルティング業界に向いているか」を見極めるために非常に重要なのです。

 具体的には、書類作成や面接対策をやってみることでコンサルタントの考え方が身につき、実際に面接を受けてみることで新たな情報を得たりコンサルタントの人となりを知ることができたりします。これらによって、ただ情報収集するよりも理解が深まります。一般的な転職とコンサルへの転職は、大きく前提が違うことをふまえておいてください。

(※本記事は、『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』から抜粋・編集したものです)