水漏れ事故の原因や場所で、責任の所在が変わる
一番多いのは「上階の住戸の過失」

(1)の主な原因としては、シーリングのわずかな切れ目やタイルの小さな欠け・割れ、防水シートの押え金物の劣化などが考えられる。これらは、例えばある条件(強風、大雨、高湿度など)を満たしたときにだけ漏水が発生することが多く、通常時に原因調査をしても場所を特定することが難しいという特徴がある。

(1)の場合、漏水の発生場所は基本的には共用部分に該当するため、原因調査や水漏れ事故時の賠償などは、管理組合が加入する火災保険(マンション総合保険など)で対応することになる。つまり、例えばある住戸の天井から水が染み出していたとしても、その上階の住戸が責任を負う必要はない。

(2)の場合、圧倒的に多いのが給湯管からの漏水だ。特に、高経年マンションでは建物の老朽化に伴い、給湯管の漏水を原因とする水漏れ事故が多い。

 一般的な構造のマンションでは、給湯管は専有部分にしかない(例外として、セントラル方式の給湯システムを持つマンションの場合、給湯管は共用部分にもある)。個別給湯のマンションでは、給湯器から蛇口(風呂場のシャワー、キッチンや洗面化粧台の水栓など)をつないでいる給湯管はすべて専有部分となり、水漏れ事故を起こした場合、下階の住戸に与えた損害に対しては、事故を起こした上階の住戸の責任で賠償する必要がある。

(3)は、例えば「洗濯機の排水ホースや給水ホースが外れていた」「トイレやキッチンなどの排水が詰まった」「風呂の水があふれた」など、居住者の過失による漏水が該当する。この場合は、言うまでもなく水漏れ事故を起こした上階の住戸が、下階の住戸への賠償責任を負うことになる。

 水漏れ事故の原因として多い順に並べた場合、これまで多くの事例を見てきた筆者の肌感覚でいうと、(3)→(2)→(1)の順になる。(3)についてはほとんどが突発的な事故であり、建物の築年数に関係するものではないが、(1)と(2)についてはマンションの経年によるところが大きいといえる。