築25年以上のマンションは
給湯管からの水漏れ事故に要注意

 こうした高経年マンションで発生しやすい水漏れ事故に対して、管理組合としては何ができるだろうか。

(1)と(2)の場合は、まずはその漏水の場所や原因を突き止める必要があるが、そうした水漏れ原因調査の費用とマンション火災保険の関連について、前回の記事「火災保険料の値上げが止まらない!保険料を抑える『3つのポイント』とは?」で触れているので、関心のある方はご覧いただきたい。

(1)のように共用部分からの漏水が原因の場合は管理組合が対応するべき事案だが、(2)に関しては、前述のように大半が専有部分にある給湯管が原因であり、管理組合が直接介入する問題ではない。

 しかし、建物の経年とともに進む給湯管の劣化によって、水漏れ事故の発生が多くなるうえ、水漏れ事故による賠償問題が居住者間のトラブルに発展することも少なくない。そのため、管理組合としてもできるだけの対応はしておきたいところだ。

 ここでまず給湯管について少し説明しておこう。特に漏水の原因となりやすいのが銅管で、その劣化によって生じたピンホール(小さな穴)が水漏れ事故を引き起こす。そもそもピンホールができるのは、その銅管全体が劣化してきているためで、たとえ該当部分のピンホールを補修したとしても、今度は別の部分にピンホールが生じ、同様の事故が発生しやすくなるという特徴がある。

 築25年以上の高経年マンションでは、かなりの割合でこの銅管が使われている。一方、築15年以下のマンションでは、ほとんどが給湯・給水ともに樹脂管(架橋ポリエチレン管、またはポリブデン管)で配管されており、銅管が使われているケースは少ない。築15~25年あたりのマンションは銅管から樹脂系の配管に移行する時期に該当し、まだ配管の素材や接ぎ手の部品代が高価だったために、その期間で徐々に移行が進んだ形だ。

 高経年マンションでなぜ銅管が多用されていたかというと、当時の配管で主流だった鉄管に比べて、「熱に強い」「腐食しにくい」「殺菌効果がある」という利点があったためだ。特に耐熱性の高さが求められる給湯管の素材として、銅管が多く採用されたという背景がある。だが、鉄管と比較すれば腐食しにくい材質とはいえ、銅管の寿命はあまり長くなく、特に接合部などは20~30年程度で劣化してしまい、やがてピンホールが発生して漏水の原因につながることになった。

 対して、樹脂系の配管素材は、鉄管や銅管と違ってさびや腐食もなく、ピンホールが開く危険性も少ない。接ぎ手部品なども含め、配管の素材としては少し価格が高いものの、耐食性、耐熱性、耐塩素水性、可とう性(柔軟性があり、折り曲げてもポキンと折れない弾性を持つ)があり、強度も優れていることから、現在ではマンションや一般住宅などにおいて、完全に主流の配管素材となっている。樹脂系であれば、漏水リスクは一気に軽減できるうえ、振動にも強いという点で、地震対策の面でも効果が期待できる配管といえる。

 国土交通省の発表によれば、日本全国には2022年末時点で694.3万戸のマンションがあり、そのうち2024年3月現在で、築25年超(1999年以前の竣工)のマンションは350万戸を越えている。今後、何も対策をしないままでいれば、全国各地のマンションで、銅管を使用した給湯管からの水漏れ事故が多発すると言っても大げさではないだろう。