顧客の9割が指名買い!岡山の100年企業が「価格競争を無視」できる秘密とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

商品やサービスを売る時、お客に「最終的に価格で決めたい」と断られ、徒労に終わった経験を持つ人も多いはず。そもそも、そういった価格重視の企業とは「積極的に取引きをしない」とはっきりとした方針をもつのが、岡山の100年企業「WORK SMILE LABO(ワークスマイルラボ)」だ。価格競争に巻き込まれず、営業利益を伸ばす方法とは?※本稿は、船井総合研究所『このビジネスモデルがすごい!2』(あさ出版)の一部を抜粋・編集したものです。

オフィス用品販売業から
ワークスタイル創造提案業へ転換

 ワークスマイルラボの起点は、明治44年、1911年にさかのぼる。岡山で筆や墨を売る文具店「石井弘文堂」として創業している老舗企業だ。

 69年に社名を「石井事務機センター」に変更し、事務用品やOA機器、オフィス家具の販売を手がけてきた。

 現社長は四代目となる。父である前社長が三代目社長として会社を引き継いだ頃は、コピー機やオフィス家具などが伸び始め、オフィス用品販売業としては、とてもいい時代だった。しかし、その後、時代の変化とともにマーケットも縮小、利益率もどんどん落ちていった。

 実は厳しい状況に陥っていることがわかっていた前社長は、会社を畳むことを考えていたという。四代目の現社長には「自分で仕事を探せ」と伝えた。しかし、すでに入社していた現社長は自分の代でつぶすわけにはいかないと覚悟を決める。

 その2年後にやってきたのが、リーマンショックだった。会社はまさに倒産の危機に瀕する。精いっぱいの資金繰りから、なんとかスタートさせたのが、「パソコンパトロール」という新しい事業。中小零細企業へのITやOA機器のサポート代行や相談を担うというもの。パソコンやネットワークトラブルがあった際には、電話で駆けつけるサービスもあった。

 しかし、これによって、コピー機やOA機器、オフィス用品などを売って終わりだった会社から、「パソコンやネットワークの相談ができる会社」という認識を持たれるようになった。

 このサービスを起点に会社の業績が徐々に安定するようになり、最悪の時期を脱することができた。

 こうして四代目社長が得意としていたデジタルツールの提案や、セキュリティ商材の販売につなげることができ、会社の収益力は高まっていった。

 15年には、四代目社長が就任。収益力が高まっていた中で、オフィスのリニューアルに取り組み、来店体験型のオフィス「ワークスマイルラボ」をスタートさせた。このアイデアは、四代目社長によるものだった。

 当時は「働き方改革」という言葉もまだなく、顧客に説明しても、なかなか理解されなかった。自分たちの売りたいものを正確にわかってもらうためには、それを表現している場所を作り、体験してもらう必要があると考えたのだ。