血管老化にどうあらがうか。血管老化に拍車を掛ける要因を減らす食事とは?食べる順番とは?特集『血管の老化を防ぐ! 血管強化術』(全8回)は、前半の4回で血管老化と病気の関係について、後半の4回で抗血管老化策について取り上げる。#5では抗血管老化策として、「抗酸化・抗糖化・抗炎症」に作用する食材リストを大公開する。(医学ライター 井手ゆきえ)
抗酸化作用があるのは
ブロッコリーやピーマン
血管老化の三大要因は、皮膚の老化を促進する要因と同じ「酸化」「糖化」そして「炎症」だ。
酸化は、活性酸素(フリーラジカル)による身体の酸性化、すなわち「さび」。活性酸素も適量なら、病原菌やウイルスを殺傷したり細胞間の情報伝達や、細胞の増殖、排卵・受精に関わったりするなど、身体に良い作用をもたらしてくれる。
ところが喫煙や過度な運動で活性酸素が過剰に発生すると、もともと身体に備わっている「抗酸化システム」が破綻し、細胞がさびついて老化が促進される。
特に、老化が進んで傷ついた内皮の隙間から、血管内膜へ滑り込んだLDLコレステロールが活性酸素と結び付くと、超悪玉の酸化LDLに変性。異物に気付いた免疫細胞に貪食されることで、血管内にプラークと呼ばれる動脈硬化巣が形成され、ちょっとした刺激でいつ爆発(血管の破綻)するか分からない地雷と化してしまう。
人間、生きて呼吸をしている限りは、取り込んだ総酸素量の数パーセントは必ず活性酸素になる。リスクから逃れられない以上、酸化と抗酸化のバランスを取る必要がある。
二つ目の糖化は、タンパク質と糖に熱を加えることで、超悪玉のAGEsが作られる現象を指す。いわゆる「焦げ」だ。
食材に風味を付け、見た目をおいしく演出する「お焦げ」は高温加熱で生じるが、身体の中の糖化は体温による「低温調理」だ。血液中を流れる余分なブドウ糖がじっくり加熱されるうちに、細胞や組織をつくるタンパク質とじわじわ結び付き、糖化が生じる。
糖化が進んだ血管は、ゆでてから数日たったマカロニのように硬くシワが寄り、柔軟性が失われるほか、血管内皮細胞の機能がどんどん低下していく。
AGEsとくっついた血管内皮細胞が暴走を始め、毛細血管のゴースト化により末梢の組織が酸素不足と栄養不足で機能不全を起こす現象は、本特集でこれまで述べた通りだ。
しかもAGEsは、活性酸素と同様にLDLコレステロールと結合し、「アテローム(粥状硬化巣)」と呼ばれるじゅくじゅくしたプラークを形成するほか、慢性的な炎症も誘発する。糖化は何にも増して、血管老化を促進する要因だといってもいい。
三つ目の炎症は、身体の免疫応答の産物で、風邪の発熱もけがをした周囲が赤く腫れるのも炎症が原因だ。血管内では血管壁の傷や酸化、糖化の影響で、常に炎症が生じている。
血管内皮機能が正常なら、すぐに血管壁の修復が始まり、炎症も鎮火するのだが、すでに酸化や糖化が進み、血管内皮機能が障害されていると簡単にはいかない。ぼやで済んだはずの炎症が野火のように広がり、血管内は死んだ内皮細胞と、掃除し残した血栓だらけの荒野と化す。
さらに炎症が慢性化すれば、炎症-修復のリモデリングで血管の内腔が硬く、狭まっていく。詰まってしまうのは時間の問題だ。
では、三大要因を一つでも減らすには何をしたらいいのか。ポイントは栄養素と食習慣、そして運動だ。
まずは酸化。人間はよくしたもので活性酸素からは逃れられない代わりに、生まれつき「抗酸化システム」が備わっている。従ってすぐできる対策は抗酸化システムをサポートする栄養素を積極的に取ることだ。
その栄養素とは、抗酸化ビタミンのC・E、カロテノイド(ビタミンA)で、いずれも活性酸素の発生を抑え、除去する作用がある。緑の濃い葉野菜やブロッコリー、ピーマン、キャベツ、そして果実にはビタミンC・Aが、ナッツ類やカボチャ、ツナ、エビや卵黄にはビタミンEが豊富に含まれる。
サプリメントの服用もいいが、やはり毎日の食事でコツコツ取っていきたい。
次ページでは、「抗酸化・抗糖化・抗炎症」に作用する食材リストを大公開する。また、食べる順番の工夫もポイントがあり、「プロテインファースト」や「カーボラスト」について取り上げる。