新世代の認知症薬「レケンビ」(一般名・レカネマブ)が2023年12月20日に保険適用され、いよいよ患者への投与が始まった。しかし、受診した患者に対する投与率はごく少数にとどまっている。特集『後悔しない医療・介護』の#1では、「夢の新薬」と呼ばれるレケンビの前にそびえ立つ壁、これを簡単に越えて恩恵を得る方法を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)
待望の「レケンビ」
処方患者はわずか1%
製薬大手エーザイが20年以上の歳月をかけて生み出した認知症薬「レケンビ」(一般名:レカネマブ)が2023年12月20日に国内で公的健康保険に適用され、いよいよ医療現場に登場した。
レケンビは、あくまでも対症療法だった既存の薬とは異なる新世代薬。アルツハイマー病(認知症の一種)の原因物質とされる、脳内に蓄積したアミロイドβを直接標的とする「抗アミロイドβ抗体薬」という種類の薬だ。
承認前の第3相試験(臨床試験の最終段階)では、早期アルツハイマー病患者において、レケンビを1年半投与した患者群がプラセボ(偽薬)投与の患者群より病気の進行が27%遅かったと報告されており、東京都健康長寿医療センターの副院長で脳神経内科部長の岩田淳医師は、レケンビの登場について「間違いなく認知症治療のパラダイムシフトだ」と断言する。
「夢の新薬」と呼ばれるレケンビの恩恵にあずかろうと、同センターには問い合わせが殺到し、海外からも連絡がきている。
では、昨年12月に保険適用されて以降、どのくらいの数のアルツハイマー病患者がレケンビでの治療を始めたのか。認知症専門医たちの見立ては「患者の1%程度」である。
国内での製造販売が承認される前から、薬価が高額になる新薬として話題を集めてはいた。しかし、保険適用下では一般的な所得層の70歳以上の場合、高額療養費制度を利用すれば自己負担額は年間上限の約14万4000円。国の医療財政への影響はさておき、患者サイドからすれば治療を断念するほどの負担ではない。
それなのになぜ、待望の新薬にたどり着く患者が少ないのか。次ページでは、その理由とともに、簡単にハードルを乗り越えて恩恵を受ける方法を明らかにする。