何しろ定年となる60~65歳までの時間は、あと10年ほどしか、ない。

「ちゃんと仕事を……」と、今までどおり滅私奉公したところで、10年も経てばあなたは会社をお払い箱になります。もちろんこの先、役員や代表クラスになる道をまだ残す方はそのまま突き進んで結構。しかし、ほとんどの方は、出世競争からはスピンアウトしているのではないでしょうか。衰えゆく体にムチを打って無理をしても、会社員としてのゴールは知れているのです。

 一方で、人生100年時代となった今や、定年してからの時間はうんとある。100歳まで生きられるかどうかはともかく、今の40~50代の平均寿命は90歳くらいにはなるでしょう。つまり、あと30~40年以上は人生が続くのです。

「ちゃんと仕事をすべき」なんて常識を捨てよう

 この長い「余生」をいかにうまく使えるかは、50代での動き方にかかっています。会社から30年近い余生を送れと放り出されたとき、「好きなことをやろう」「やりたかったことを始めよう」と思っても、60歳を過ぎていたら、今よりも体力も意欲も衰えているはずです。

 まだ動ける50代のうちに動き出したほうがいい。

 10年もあれば、相当な準備ができるし、挑戦もできます。

 たとえばギターを弾いてみたかったら、今から始めましょう。50歳の素人でも、60歳になるまでの10年練習すれば、相当なテクニックを手にできます。ライブハウスのステージに立つことだってできる。そのためにバンドを組んで、仲間を見つけるのにも十分な時間があります。

 逆に定年になって65歳になってギターを始めて、そこそこ弾けるようになるのが数年後。そこから気の合うバンドメンバーを見つけるのはいかにも困難に思えませんか?

 もとより、もうステージで演奏する体力も気力も、今より格段に落ちていそうです。

「飯炊き3年握り8年」なんて言葉があるように、寿司職人として一人前になるには10年の修業が必要といわれます。50歳で修業を始めたら、60歳の頃には立派な寿司職人として独り立ちすることだってできます。

 大学に入り直して、新しい勉強を始めて、大学院まで進んで博士号だってとれる時間もある。