山科疏水水辺に桜はひときわ映える(山科疏水) 

前回は京都で最初に咲く桜などをご紹介しました。開花宣言を受けて、いよいよ本格的な花見シーズンが到来します。連載2回目は、洛を旅する「らくたび」が、大河ドラマで注目の平安時代のお話をご紹介しながら、歩いて回れるオススメ桜コースと静かに観賞するための時間帯別桜スポットを伝授いたします。(らくたび、ダイヤモンド・ライフ編集部)

オススメ桜コースを歩いて巡る

 先日、堀川に架かる一条戻橋を通ったところ、橋のたもとで早咲きの「カワヅザクラ(河津桜)」が満開を迎えていました。一条戻橋といえば、大河ドラマ『光る君へ』で暗躍する陰陽師・安倍晴明が暮らした邸宅跡(現・晴明神社)のすぐ近く。

 父・三好清行の臨終に間に合わなかった子・浄蔵貴所(八坂の塔の傾きを法力で直したという伝説を持つ僧)が、堀川に架かる一条通の橋で父の葬列に追いつき、棺にすがって一心に祈ると、なんと!父が一時、命を戻して生き返ったことから「一条戻橋」と呼ばれるようになりました。

若村亮若村 亮  わかむら・りょう株式会社らくたび代表取締役。京都関連書籍や旅行企画をプロデュースする一方、大学の京都学講師や各所文化講座の京都関連講演などで、月の半分は全国を飛び回っている。現在講師を務めている講座には、学習院大学、NHK文化センター、クラブツーリズム、中日文化センターなどがある。ほぼほぼ毎日、京都の歴史文化や最新の観光情報などをライブトークする「らくたび通信ライブ版」を配信、アーカイブもYouTubeでも視聴可能。この他、FacebookInstagramX(旧Twitter)でも発信している。

 その後も鬼退治の伝説で名高い武将・源頼光の四天王(家臣)のひとり、渡辺綱が怪しげな鬼女に一条戻橋で出会うなど、平安時代の奇々怪々な逸話を現代に伝えるミステリースポットとして知られているこの橋に、清らかな桜花が彩りを添えている、このギャップもまた、京都で花見をする面白さといえるのではないでしょうか。
 
 さて、3月中旬の冷え込みが影響したのか、当初の開花予想よりも遅れ気味でしたが、いよいよ日本の桜の代名詞といえるソメイヨシノが京都でも咲き始めました。京都地方気象台による京都の開花基準となる標本木は、一条戻橋から南へ徒歩10分ほどの広大な世界遺産・二条城の敷地内にあります。この標本木は、推定樹齢50歳。人間より短命なソメイヨシノでは結構な古株です。

 ちなみに、このソメイヨシノのつぼみが5~6輪ほど花を咲かせると「開花」が、80%以上の花が咲いたら「満開」が宣言されるそうです。

 今回は、歩いて巡りながらソメイヨシノを見ることができる「オススメ」桜コースと、混雑を避けて早朝・夕方・夜の時間にソメイヨシノを見る通(つう)な「時間帯別」桜スポットを案内します。
 
 まずは「オススメ」桜コースから。朝はできる限り早起きをして、八坂神社の門前町として栄えた花街の祇園かいわいからお花見をスタートしましょう。京阪「祇園四条」駅の8番出口から地上に上がると、ほどなく祇園白川の清らかな流れが見えてきます。元お茶屋の趣深い建物が軒を連ねる白川に沿って、ソメイヨシノやシダレザクラが寄り添う白川南通を進み、巽橋へ。この一帯は、石畳と朱塗りの玉垣、ソメイヨシノが古都情緒を織り成して、ひときわ華やいでいます。
 
 ここで巽橋は渡らずに花見小路を上り、ふたたび祇園白川に沿って歩けば、さきほどの白川南通よりも人の少ない小径があり、ゆったりと桜を眺めることができます。ここから5分ほど歩いて八坂神社を参拝し、さらに円山公園へ。

 ここは今から140年近く前に開かれた京都市で最古の公立公園で、平安神宮神苑や無鄰菴(むりんあん)庭園などを手がけたカリスマ作庭家・七代目小川治兵衛によって造園されました。桜は、ソメイヨシノやシダレザクラなど約680本。ひょうたん池の西側は「祇園しだれ桜」を中心に昼から夜まで花見客で大賑わいですが、池の東側は比較的ゆったりと観賞できるので、ぜひ足を延ばしてみてください。

祇園しだれ桜京都人なら誰でも知っている「祇園しだれ桜」(円山公園)