およそひと月にわたり桜を堪能できる京都。本格的な花見シーズンが始まる前に、京都観光ガイドのプロ集団「らくたび」が、必見の花見スポットと静かに鑑賞するための裏技を伝授します。連載第1回となる今回は、早咲きの桜をご紹介します。(らくたび、ダイヤモンド・ライフ編集部)
1シーズンに3回は愛でたい京都の桜
NHK大河ドラマ『光る君へ』の主人公で、『源氏物語』を著した紫式部。彼女が活躍した平安時代、六歌仙の一人である在原業平はこう詠みました。
世の中に 絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし
コンパクトな街のそこかしこが薄紅色に染まる春の京都は、まさに桜の都! 悠久の時を重ねた神社仏閣の古色蒼然とした建築と、はかなくも麗しい桜の共演は、古都ならではの趣深い絶景です。早咲きから遅咲きまで、さまざまな品種の桜が、ひと月にわたってリレーのごとくバトンを継いでいくため、幾度も花見のチャンスが得られるのも、京都の桜の魅力といえます。
訪れるべき桜の名所を見頃の時系列で「早咲き」「ソメイヨシノ(染井吉野)」「遅咲き」の3回に分けて、「らくたび」のメンバーが皆さんをご案内いたします。
今年の京都の開花予想は3月21日、標本木のソメイヨシノは二条城にあります。例年は、早咲きが3月25日~4月5日頃、ソメイヨシノは4月1日~10日頃、遅咲きは4月10日~20日頃なので、それぞれ見頃が早まるかもしれません。
花見に出かける前に、京都で見られる主な桜の品種についてご紹介しておきましょう。桜の基本形となる野生種には、純白の花の開花と同時に赤褐色の若葉が芽吹く「ヤマザクラ(山桜)」、純白の花の開花と同時に芽吹く緑の若葉が特徴の「オオシマザクラ(大島桜)」、一本桜として国の天然記念物に指定されるものも少なくない「エドヒガン(江戸彼岸)」などがあります。
全国的に最も親しまれている「ソメイヨシノ」は、エドヒガンとオオシマザクラをもとに人の手が加わった栽培品種で、接ぎ木で育むため、全国津々浦々に存在する染井吉野は、すべて同じ一本の原木からのクローンだといいます。神社仏閣でよく見られるシダレザクラ(枝垂桜)やベニシダレザクラ(紅枝垂桜)も同じく人の手によります。
花見の充実度を格段に上げるために工夫が必要です。一つは、時間ずらし。早起きをして開門直後の時間帯を狙ったり、帰り始める日帰り観光客と逆行して夕刻に訪れたりするなど、時間帯を意識することです。
もう一つは、交通手段。インバウンド観光客が殺到している京都では、道路が渋滞することが多いので自家用車やレンタカー、市バスやタクシーを控えるのが賢者の選択。JRや私鉄、市営地下鉄など電車を活用して最寄りの駅まで行き、そこから歩いて巡るのがおすすめです。自転車は渋滞知らずで、スイスイ走れますが、意外と駐輪可能な場所が限られているのが難点です。
歩いて巡る京都の早咲き桜、まずは洛北方面からスタートしましょう。