「本離れ」「出版不況」といわれるが……
出版業界の潮流と、大手4社の業績を見る
確かに「紙の出版」は衰退傾向にある。だが、出版大手4社の業績は絶好調だ。利益を10年前(※KADOKAWAは上場2期8年前)と比べてみよう。
講談社が4.1倍(27.6億→114.2億円)、小学館が13.3倍(4.6億→61.6億円)、集英社が4.2倍(37.5億→159.2億円)、KADOKAWAが1.9倍(68.5億→126.8億円)と、それぞれ利益は大幅に増えている。
一方、売り上げは利益ほど増えていない。講談社が1.4倍、小学館が1.1倍、集英社が1.7倍、そしてKADOKAWAが1.3倍程度にとどまっている。売り上げはさほど変わらず、利益だけが増えた。つまり、「売るものが変わった」(事業ポートフォリオが変わった)ということになる。どのように変わったのか? 紙の本から電子書籍へ。書籍の販売から版権ビジネスへ変わったのだ。
講談社を例に見てみよう。売上高は10年前と比べ、「紙の出版事業」が6割弱(933億→534億円)に減る一方、「電子出版・版権ビジネス事業」が6.6倍(162億→1071億円)に増えている。利益率の低い「紙の出版」から、利益率の高い「電子出版」「版権ビジネス」にシフトしているのだ。
版権ビジネスを牽引しているのはアニメだ。アニメの市場規模(広義)は、この10年で約1.5兆円から3兆円へと急増している(※4)。
アニメの多くは、マンガやラノベ・小説が原作だ。集英社の「THE FIRST SLAM DUNK」が2023年の国内興行収入1位(159億円)に、小学館の「名探偵コナン 黒鉄の魚影」が2位(139億円)になったことは記憶に新しい。原作使用許諾や、製作委員会の分配金・窓口収入など、版権収入が急増しているのだ。
マンガの人気が高まりアニメ化される。アニメ化されるとマンガも売れる。話題性が高まりグッズも売れる。相互に収益を高める「メディアミックス」が形成されていく。
メディアミックスの先駆者は、他ならぬ「KADOKAWA」である。手法を確立したのは実に47年前、まだ社名が角川書店だった頃だ。