「見てから読むか、読んでから見るか」
メディアミックスの先駆者KADOKAWA
以下のキャッチコピーをご記憶(あるいはご存じ)だろうか?
「見てから読むか、読んでから見るか」
1977年の角川映画「人間の証明」で使われたキャッチコピーである。映画を売る。本も売る。メディアミックスを体現したような文章だ。そもそも、角川が映画化に乗り出した理由は、「原作小説を売るため」だった。さらに「人間の証明」では、
「小説や映画だけではなく、音楽も売ろう」
ともくろむ。物語のキーとなる西條八十の詩――「母さん、僕のあの帽子、どうしたんでしょうね」――を英訳した主題歌を作る。多くの人が歌詞を覚えてしまうほど、頻繁に映画CMをテレビで流す。
映画「人間の証明」の興行収入は22.5億円、興行ランキングは2位(1位は「八甲田山」25億円。これは当時の歴代新記録だった)。森村誠一原作の小説『人間の証明』の売り上げは累計770万部。主題歌「人間の証明のテーマ」は51.7万枚を売り上げ、オリコンで週間2位・年間23位となった。
映画・小説・音楽が一体となったKADOKAWAのメディアミックスが確立されたのは、このときだ。以降、薬師丸ひろ子や原田知世などを起用し、メディアミックスをさらに強化していく。
メディアミックスのノウハウを蓄積した現在のKADOKAWAは、出版関連大手4社中、売り上げトップである(※直近決算値)。そして、唯一の「上場企業」でもある。これは、親からすれば安心材料だろう。
だが、「上場企業として不適切」な事件が、1年半ほど前に発覚している。