エレーナ・マリツカヤ氏2023年11月にキーウで行われたイベントに登壇したエレーナ・マリツカヤ氏。(写真提供:マリツカヤ氏)

2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻(ウクライナ戦争)。いまだに終息のめどは立っておらず、“支援疲れ”などの言葉も聞こえてくる。そんな状況でも関心が高いのが「復興マネー」だ。インフラ整備などの大規模プロジェクトに直接関わるのは難しいかもしれないが、ウクライナの“復興”に関連するビジネスチャンスに乗りたいと期待する企業は珍しくない。特に注目されているのが、復興に大きな役割を果たすとされるウクライナスタートアップである。(ジャーナリスト/PRプランナー ミハシヤ)

Grammarly、GitLab、People.aiなど
有名企業を多数輩出してきたウクライナ

 ウクライナのスタートアップと聞いてもピンとくる日本人は少数派だろう。しかし「ウクライナ人が米国などで起業した」「共同創業者がウクライナ人」といったケースを含めると、ウクライナはユニコーンや世界的に有名なスタートアップをいくつも輩出している。

「Grammarly、GitLab、People.ai、Preplyはいずれもウクライナ人が起業しており、WhatsAppやPayPal、Revolutの共同創業者はウクライナ出身です。このほかにもウクライナは数多くの有望なスタートアップを生み出しています」

 と語るのは、デジタルシンクタンクのISEグループとISEコーポレートアクセラレーターの創設者兼CEOのエレーナ・マリツカヤ氏。マリツカヤ氏はウクライナと中東欧におけるプライベートエクイティーとベンチャーキャピタルで15年以上の投資経験を誇る。現在はウクライナのキーウとポーランドのワルシャワの二拠点をベースに精力的に活動を続けている。欧州各地のカンファレンスなどでスピーカーを務める機会も多く、ウクライナだけでなく、各国のスタートアップ事情にも明るい。

 気になるのは戦争の影響だが、ウクライナが強みを持つITセクターは、工場やプラントを必要とする産業に比べると影響が少ない。また、多くのスタートアップが海外に拠点を置き、リスクをコントロールしている。

「これは事業規模を拡大したり、新しい市場への参入や事業開発にも有効です」(マリツカヤ氏)