ウクライナのスタートアップが
日本を訪れピッチを行う

 実際に日本を訪れたスタートアップにも話を聞いた。2月19日に東京で「日・ウクライナ経済復興推進会議」が開催され、その数日前の2月15日~17日にはJICAによる「Connecting with Ukraine~日ウクライナパートナーシップの強化と共創~」というイベントが開催された。官民一体となった持続的な取り組みの促進を目的にしており、ウクライナのスタートアップ数社も招待されピッチを行った。

WantentのCEO、オレクシー・シャルデンコ氏WantentのCEO、オレクシイ・シャルデンコ氏(写真提供:シャルデンコ氏)

 そのうちの一社が「Wantent」。同社はコンテンツの効果を評価するためのAIベースのソリューションを提供する、キーウを本拠地とするスタートアップだ。戦争が勃発する直前に、JICAや日本の大企業などが後援するアクセラレーションプログラムに採択されており、その縁もあって今回の参加となったという。先にも述べたようにウクライナでは現在、18~60歳の男性は自由に国を出ることはできないが、今回のような国際的なイベントに出席するなどの理由があれば、一時出国が認められるという。

「急速な成長と海外市場との交流の可能性を秘めたスタートアップは、ウクライナ再建の原動力の一つです。国際社会でそれを訴求するのは私たちの役割だと考えています」と語るのはWantentのCEOを務めるオレクシイ・シャルデンコ氏。日本訪問は初めてだったが、戦争という困難な状況にあるウクライナに対して、日本が非常に強い支援体制を示したことはとても心強かったという。

 会期中には登壇したウクライナスタートアップと日本企業の個別ミーティングもセットアップされたが、そこではWantentが提供するソリューションが、日本の文化特性などにどのように適応できるのかということや、個人データの処理や保存に関してなど、かなり具体的なやりとりができたという。

「すぐに何か大きな展開があるわけではありませんが、対面でピッチやデモンストレーションを行うことができたのは非常に有意義だと思います。このようなイベントは投資や協業などの実現可能性を確実に加速させると思います」

 と語るシャルデンコ氏。次に日本を訪れる機会が待ちきれないという。