ウクライナのスタートアップが
戦争前から海外志向だった理由

 ウクライナのスタートアップは戦争前からグローバル志向が高かった。国内経済がぜい弱なため「海外に出て一旗揚げよう」というケースが少なくないのだ。比較的早い段階からグローバル市場を目指すスタートアップが多かったが、戦争でその傾向がより加速したといえそうだ。しかし、多拠点展開はその分コストもかかるし、戦争勃発以降、ウクライナでは18~60歳の男性の出国が制限されているという困難もある。

「確かにウクライナのスタートアップが直面している環境は厳しいものがありますが、それでも彼らはうまく対処し、ビジネスを発展させています」とマリツカヤ氏。実際、戦争中にもかかわらず成長を続けている企業も少なくないという。

 しかし、やはり資金調達には苦労するケースが多いようだ。戦争という究極のリスクをどのようにコントロールし、マネジメントしていくのか、投資家が納得できるように示す必要がある。

「そもそもヨーロッパではベンチャー・ファイナンスが全般的に停滞していることも影響していると思います」(マリツカヤ氏)

 ウクライナのスタートアップに関心を持つ日本企業に対して、マリツカヤ氏は次のようなメッセージを寄せる。

「ウクライナのスタートアップに投資をするというのは非常に良いアイデアだと思います。なぜなら、ウクライナのスタートアップは常に『ビッグになる』ことを念頭に置いており、より大きな市場で成長するという考え方を強く持っているからです。規模拡大のために早い段階から米国を目指すスタートアップも非常に多くあります」

 つまりウクライナのスタートアップはハングリー精神が旺盛で、グローバル市場に果敢にチャレンジするのをいとわないということだ。

「ウクライナは高度なIT人材も豊富で、さまざまな分野に質の高いスタートアップが存在します。投資家のニーズにマッチした企業も見つけやすいはずです」(マリツカヤ氏)