ウクライナのスピード感と柔軟性に慣れることが必要
一方、ウクライナのスタートアップは正反対だ。「彼らは好機を見逃さず、迅速に行動し、クリエーティブな考え方で柔軟に対応します」とヴァヴァク氏は述べる。
ウクライナは以前から、経済危機や災害などさまざまな困難に見舞われてきた。そのたびに人々は知恵を絞って厳しい状況を克服してきたのだ。ウクライナのスタートアップには、苦難の歴史を乗り越えてきた打たれ強さのようなものが受け継がれているという。
「ただし、ポーランド人としての私の視点からすると、彼らの行動は短絡的だと思える場合もあり、もう少し長期的視点も考慮して決定を下すべきだと感じることもあります」(ヴァヴァク氏)
要するにウクライナのスタートアップには慎重さに欠ける部分が多少はあるものの、スピード感があり、思い切った決断ができるということだ。戦争という何が起こるか分からない状況においてはその重要性はさらに高まる。
「ウクライナ企業との協業を考える日本企業は、戦争中の社会特有の絶え間ない変化と、それに対応する柔軟性に慣れる必要があるのではないでしょうか」(ヴァヴァク氏)
スピードや柔軟性というのは多くの日本企業が苦手とする部分ではあるが、そこは克服すべきなのかもしれない。
復興支援や協業しようにも
「ウクライナから日本が選ばれない」可能性もある
最後に、ウクライナの隣国であるポーランドを拠点とする日本人としての筆者の意見を少し述べたい。
多くの日本人にとってウクライナは遠い国だ。情報も限られているので、イメージと現実とのギャップが大きいように思う。いまだに「旧共産圏の前近代的な国」のイメージを持つ人も少なくない。昨今、日本で報道されるウクライナの情報は戦争に関するものが多いが、国全体が焦土と化しているわけでもない。
何が言いたいかというと、“かわいそうなウクライナに手を差し伸べてあげる”というような上から目線のアプローチではうまくマッチングしないだろうということだ。
有望なウクライナ企業には、世界が着目している。ウクライナ側にとっては、似たような条件なら文化や習慣が近い欧米との協業の方がスムーズに運ぶ。経済が低迷していることもあり、日本は日本自身が期待するほど“選ばれる国”ではなくなってきている。日本とウクライナには大きな経済格差があるものの、ビジネスパートナーとして対等な立場に立ち、情報をしっかりアップデートし、「自社と協業すれば御社にはこのようなメリットがある」ことをきちんとプレゼンしなければ、“選んでもらえない”可能性も相応にあることを意識すべきではないだろうか。