寿命だけではなく、家は健康をも大きく左右することがわかっている。近畿大学の岩前篤教授が長年調査した結果によると、引っ越し先の断熱性能のレベルで持病の改善率が大きく違うことがわかっている。それらはアレルギー性鼻炎、手足の冷え、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎などだ。これは室内の断熱だけでなく、空気環境(温度・湿度・汚れ)を良好にすることの効果でもある。

 国土交通省はスマートウェルネス住宅等推進調査委員会を立ち上げ、断熱改修前後の居住者の健康への影響を検証している。その結果、室温が18度以上と12度未満で比較すると、12度未満のときは高血圧、コレステロール値の上昇、心電図異常、夜間頻尿、睡眠障害が引き起こされている。この他、室温と湿度を適度に保つことで、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、中耳炎を抑制できることも分かっている。

 これは私も実感がある。夜の寒いリビングで鼻をかむ回数が格段に多く、なぜその場所でだけアレルギー性鼻炎が悪化するのか、不思議に思っていた。これを知って以来、室温を上げて快適に過ごせるようになった。

賃貸で長生きはほぼ不可能
断熱性能の高い持家購入を

 断熱された家で冬場の室温を高く保つことで、健康的な生活を送り、寿命を延ばせる可能性は高い。それを実現する住居は賃貸ではほぼ不可能で、日本には実在しないに等しい。自宅である持家を取得する際に、断熱性能を上げておくしかない。

 中古マンションは十分な断熱性能を持ち合わせていないが、断熱リフォームを120万円ほどでできる。これについては、補助金と減税を最大に組み合わせれば8割以上キャッシュが戻ってきて、残りは光熱費の削減で数年のうちに回収できる見通しだ。そのやり方はやや複雑なので、別の機会に詳しく説明しよう。それだけ、国や自治体も室内環境の改善を後押ししているということだ。

 戸建を建てるなら、注文住宅で断熱性能が高いものを依頼すると、快適な家を手に入れることができる。そうすれば、健康と寿命というプライスレスな価値を手に入れられる確率が上がるので、この際、家の選び方を変えることをお勧めしたい。

(スタイルアクト(株)代表取締役 沖 有人)