33年ぶり地価上昇で盛り上がる不動産市場に潜む「下落リスク」とは?Photo:PIXTA

公示地価が33年ぶりの上昇率となり、地価にも「脱デフレ」への期待が表れている。首都圏だけでなく特徴的な地方都市でも上昇トレンドは波及している。しかし、それだけで、日本経済が本格的な回復に向かうと論じるのは早計だ。4月8日、物価の変動を反映した2月の「実質賃金」が、前年同月比1.3%減で23カ月連続減少したと明らかになった。不動産価格の上昇はいつ一服するのか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

33年ぶりの地価上昇も過度の楽観は禁物…

 3月26日、国土交通省は2024年の公示地価を発表した。全用途の全国平均の地価は前年比2.3%上昇した。上昇は3年連続で、バブル終焉期の1991年以来、実に33年ぶりの伸び率だ。春闘での賃上げ(第1次集計で、プラス5.28%)、日経平均株価の史上最高値更新に続き、地価にも「脱デフレ」への期待が表れている。

 地価上昇の背景には、ここ2年半ほどの間、わが国経済がデフレから脱却しつつあることがある。インフレになると貨幣価値は下落し、その分、土地は株式などの実物資産の価値は上がる。そうした経済の原則が、わが国経済にも表れているということだ。

 新型コロナウイルス禍からの回復もあり、首都圏などで商業用地の地価が上昇した。また、円安の影響もあり、海外からの直接投資が増加し、外国人観光客(インバウンド)需要も伸び、再開発を中心とした地方都市の地価上昇の追い風になった。

 当面、地価の上昇傾向は続くだろう。23年の平均価格で、東京23区の新築マンション価格は1億円を超えた。東京での居住を諦め、他県でマンションや戸建て物件を探す人は多い。不動産市場の一角で過熱感は強まっている。ただ、未来永劫(えいごう)、不動産の価格が右肩上がりで上昇するとは考えづらい。

 中国で不動産バブルが崩壊したこともあり、日本の不動産に対する海外投資家の投資意欲が細り気味になっているとの指摘もある。日銀の追加利上げなどもリスク要因だ。33年ぶりの地価上昇はわが国経済の回復に重要だが、長い目で見ると過度の楽観は禁物だろう。