海外投資家には「かなり安く映る」日本の不動産

 24年の公示地価によると、地価の上昇は首都圏だけでなく地方都市にも波及した。上昇率は東京、名古屋、大阪の三大都市圏で前年比3.5%、札幌市、仙台市、広島市、福岡市の地方4市は同7.7%と高かった。

 地価上昇の要因として、わが国経済がインフレ気味で推移したことは重要だ。21年9月、消費者物価指数の前年同月比の変化率がプラスになりデフレ脱却への期待が高まった。続く22年4月、上昇率は日銀の物価安定の目標である2.0%を上回った。そうして本年2月まで23カ月連続でインフレ率は2.0%を上回った。

 物価が上昇すると、貨幣(お金)の価値は下落する。すると、個人や企業がお金の価値を守るために、株式や土地、建物など実物資産の保有動機が高まる。株式や不動産に資金を投じる人は増えていて、これは世界的な傾向でもある。例えば、インフレが進むトルコでも不動産価格が急騰している。トルコでは家主が大幅に家賃を引き上げたことに居住人が反発し、「賃貸けんか」と呼ばれる社会問題まで起きている。他方、物質として価値が一定である金(きん)の価格も上昇している。

 海外投資家にとっては、わが国の不動産投資の妙味は増した。世界的に物価が高止まりする中、日銀はマイナス金利政策など異次元緩和を続けてきたからだ。3月の決定会合で日銀はマイナス金利の解除を判断したが、それまでに米国などでは大幅な利上げなど金融引き締めが進んでいた。わが国と米国などの金利差が拡大したことで、円安が進行したのは周知の通りだ。ドルなどで運用する海外投資家にとって、円建てのわが国の不動産はかなり安く映っている。

 バブル崩壊後のわが国は低迷が長く続いた。コロナ禍からの回復にも時間がかかった。こうして不動産価格の割安感が強くなり、それに目を付けた主要投資家が、東京都心のオフィスビル、あるいは地方のリゾート施設など、日本の土地に資金を投じたことで地価は上昇した。