九州の成長に期待で福岡市に資金流入

 現状、わが国経済はそれなりに活発化しつつある。首都圏など三大都市圏では、コロナ禍の最悪期が去り、人の往来が活発化して商業用地の需要が高まった。テレワークを続けつつ、人材確保策の一つとして好立地のオフィスを構える企業も増えている。住宅地では、主要な駅から近く、都市部にアクセスの良いエリアでマンション建設が増えてもいる。

 一方、地方圏の地価も3年連続で上昇した。共通する要因として、まず、インバウンド需要の増加が挙げられる。また、熊本県や北海道で半導体の大型工場が着工したことにより道路や鉄道、港湾施設の建設も盛り上がっていることが地方圏の地価上昇を支えている。

 例えば福岡県では地価が前年比5.7%上昇、商業地は6.7%上昇だった。いずれも全国トップである。天神エリアの再開発でオフィス建設が進んだことで、近隣地域のマンション建設も増加した。場所によってはデベロッパーによる土地の争奪戦も起きている。また、インバウンド需要も増えているし、熊本県でTSMCの半導体工場が建設中であることから、中長期的な九州エリアの経済成長に期待が高まっており、中核都市である福岡市および周辺の土地や不動産に投資資金が流入している。

 同様に、北海道の富良野市でもインバウンド需要を背景に地価が上昇し、千歳市ではラピダスの半導体工場建設により地価が上昇した。

 また、沖縄県では住宅地が5.5%上昇した。とりわけ宮古島市上野野原の地価は21.2%の上昇を付けた。宮古島では伊良部大橋(15年開通)などのインフラ整備が進み、リゾートホテルの建設などが増加したことで、関係者などの住宅需要も増えたことが要因だ。

 インフラ整備による地価の上昇は、福井県福井市(北陸新幹線・敦賀駅の延伸開業)、神奈川県横浜市(相鉄・東急新横浜線の開業)などにも当てはまる。他方、鳥取県日吉津村のように、子育て支援を強化した地域の地価が上昇した例もある。

 一方、それらとは正反対に、インバウンド需要や有力企業の誘致、子育て支援の拡充などが難しく、地価が下落した地域もあることも指摘しておきたい。