最近は、中国経済を見限る投資家も増えているようだ。米ドルに対する人民元の下落は明らか。株式市場も、上海、深セン、香港ともに弱含み傾向だ。そうした状況下、中国株を売り、その資金を日本株に振り向ける海外投資家が増えている。背景にある中国経済のメカニズムを振り返るとともに、米国の金融政策が中国経済を下押しする可能性についても考察する。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
逆回転し始めた中国の高度経済成長のメカニズム
6月30日、中国国家統計局は、6月の購買担当者景況感指数(PMI、50を境に景気の拡大と減速を示す)を発表した。それによると、製造業の指数は49.0で、3カ月連続で50を下回った。一方、非製造業の飲食、宿泊、交通などサービス業の指数は、前月から低下し53.2だった。中国経済の停滞懸念は高まっている。
中国では過去、景気の先行き懸念が高まると、共産党政権は積極的な経済対策を実行してきた。その政策が、中国経済の高成長を支えてきたといえる。特に重要だったのが不動産投資だ。不動産価格が上昇する期待を背景に、不動産に対する投資は増え、国全体の景気を下支えした。地方政府の土地使用権の収入は増え、それを原資として刺激策を実施し経済成長率を押し上げることができた。
ところが今、かつての高成長のメカニズムが逆回転し始めている。不動産市況は悪化し、地方政府の歳入は減少。そのため、大規模な景気対策を打ち出すことが難しい。共産党政権による政権を維持するための指導部人事も、先行きを不透明にする要因になっている。そうした状況をかんがみた国内外の投資家が中国経済に見切りをつけ、わが国などに資金を振り向ける動きが目立ち始めてもいる。