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水面下で進められていた「日の丸電池」の統合交渉が暗礁に乗り上げている。統合プランは、官民ファンドの産業革新機構主導で、ソニーの電池子会社「ソニーエナジー・デバイス」と日産自動車・NECの合弁会社「オートモーティブエナジーサプライ(AESC。出資比率は日産51%、NEC49%)」を経営統合し、新会社に革新機構が出資する、というもの。AESCは、日産の電気自動車「リーフ」に搭載する電池を生産している。
発端は、ソニーが電池事業の売却を急いだこと。売却先として中国・台湾系企業が想定され、経済産業省は敏感に反応した。「(中国ハイアールへ売却した)三洋電機の白物と同じ轍は踏まない」(経産省幹部)と、海外への技術流出を恐れたからだ。こうして、大同団結により国策として電池技術を守るシナリオが描かれた。
日産とNECにとって、大同団結構想は渡りに船だった。両社は合弁解消を探っていた節がある。日産は、業績低迷で投資余力のないNECに不満を持っており、AESCを連結対象会社からはずす思惑があった。NECにしても、「リーフ」の販売不振により電池の生産計画が下振れし、車載電池事業が足かせになりつつあった。
だが今、ソニー、日産、NEC共に大同団結へ向かう動機があるにもかかわらず、統合交渉は難航している。ネックとなっているのは、新会社への持参金(出資金)。そもそも、民生製品に強いソニーと車載電池のAESCでは顧客が異なり統合メリットは小さい。新会社の成長戦略が描けない以上、税金が元手である革新機構からカネを引き出すことへの批判も避けられない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)