トヨタは、ダイハツの立て直しに向けてトヨタ中南米本部長の井上雅宏氏を社長に、トヨタ本体の副社長も経験したトヨタ九州副社長の桑田正規氏を副社長に送り込んだ。ダイハツプロパーで生産畑の星加宏昌氏が唯一副社長として留任し、三首脳陣で再生に向かう。8日の会見でも経営改革で機能軸・縦割りを排除し「横連携」「コミュニケーション重視」を意識した組織再編をするほか、5階層あった組織を3階層(社長→副社長→本部長)へスリム化し、若手プロジェクトリーダーを抜擢することを打ち出した。モノづくり・コトづくり改革、風土改革、経営責任の明確化で再発防止に向けた取り組みを行う。
これらについては、“ありきたり”な項目ばかりなので、むしろどれだけ実践できるか、実行力について注目したい。ただし、経営責任の明確化について、旧経営陣による23年度の賞与返納にとどめていることは疑問だ。長年にわたる不正の根本的な問題は親会社のトヨタの責任にもつながるものであり、歴代トップの責任は免れないはずだ。
ともあれ、大事なのは今後の方向性だ。まずは国内の軽自動車におけるダイハツブランドの回復と、国内ディーラーおよび業販店へのフォローが急務であろう。
かつてトヨタでは、トヨタ自販の「一にユーザー、二にディーラー、三にメーカー」という顧客第一主義の徹底が「販売のトヨタ」を築き上げた。ダイハツも“良品廉価”の商品に、過去に築いたディーラー網と業販網の販売力がかみ合うことで、軽自動車のトップシェアを続けてきたのだ。
需要がシュリンクしながらも国内自動車市場の4割を占めるなど、まだまだパイは大きい軽自動車市場で再び首位を奪還できるかどうかは、生き残りに向けた試金石となるだろう。
一方で、軽自動車のBEV化も依然大きな潮流として立ちはだかる。特に軽BEVは、いかにコストダウンできるかが大きな課題だ。軽乗用車と軽商用車では取り組み方も異なってくる。余談だが、ダイハツはかつてBEVに取り組んだこともある。群馬・前橋にあった子会社のダイハツ車体(現ダイハツ九州)でEV(ゴルフカート)を製造していた。
軽商用車ジャンルの中で軽トラックはダイハツとスズキだけが生産メーカーでもあり、日本独自の規格である軽自動車(軽乗用車・軽商用車)自体を維持できるかも含めて、今後この軽EVの方向次第では、軽自動車の再編にもつながる可能性も否定できない。
軽自動車の「ガラパゴス化」も指摘される中で、ダイハツのライバルであるスズキはインドで圧倒的な収益力を誇っている。「軽を中心としたモビリティカンパニー」のダイハツが生き残るために早くみそぎを済ませて、しっかりとした経営を行ってほしいと願う。
(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)